続いてPlusにアクセラレータを付けた。何と3万円で売っているBrainStormという凄い奴である。何が凄いとって名前も凄いが構造も凄い。元のCPUの上にソケットをじかに半田付けして、そこに16MHzの68000を載せる。クロックはメインボードの近所から16MHz(つまりまだ分周する前)を空中配線で取ってくる。これで16MHzが直接ロジックボード上に流れて、全体としてほぼ完全に倍速になっていると言う訳だ。当然RAMも100ns以上のものでないと受け付けない。オーバーヒートさせずにソケットを付けるために、一時間以上を費やして(それこそ涙を流しながら)64箇所の半田付けをやった。
更にどうせ電源がもたなくなるだろうと予想して内蔵のハードディスクを外に出し、自作のケースに詰め直した。Plus内部の熱も気になるのでファンを内蔵させた。こうして以前より安定したうえに倍速になって生まれ変わったBrainStorm Plusとなった訳である。
こういう改造をしたときは、最初に電源を入れるときに独特の「どきどき」を味わえる。こればかりはやった人でないと判らないだろう。しかしこうしてしばらく使っていたこのPlusを僕は何と売り飛ばしてしまったのだ。加速してからおよそ一年後に、7万5千円で知合いに改造ディスクごと売ってしまった。貧乏症の私がPlusを売るには理由が有る。何とIIfxを買ってしまったのだ。IIfxは92年の冬に生産が停止となり、しばらくして某通信販売店で399000円で叩き売りに出された。Quadra700がまだ高い頃で、何よりIIfxが好きな私はこれに飛びついた。4MB/80MBという最小構成で売られていたIIfxに、Internetの個人売買を利用して入手したPLI fastSCSI2ボードとRastorOPS264を取り付け、それからこれまた通信販売で購入したソニーのマルチスキャンモニタGVM1411を加えた。ちびちびSEから一気にフルカラーの世界へ突入である。OSもSystem7 + GomTalkから漢字Talk7へと代わり、QuickTime1.5を利用して結構高速なムービーが見られるようになった。もう2年も前にApple Center肥後橋の開店記念売りだしに9800円で購入したMicroTVでテレビも見ることが出来る。また知合いから何とVideoSpigotを借りることが出来、自分でMovieを作って遊べる。また、購入を記念してMorphを購入し、いきなりMorphingを楽しんでいる。
IIfxにはNuBusスロットが6本も付いているが、現在その全てが埋まっている。職場の事務用に使っているので職場で購入したものが追加されて、Ethernet, Apple 8bit video, RastorOPS264, PLI fastSCSI2, MicroTV, VideoSpigotという顔ぶれである。これにApple PortraitとGVM1411が接続されてデュアルモニタで利用している。他にもHDとして200MB, 5.25inch MO, CD-ROM, Syquest44MB更に時々GT4000カラースキャナを接続するのでSCSIもほぼ満席状態である。IIfxもこれだけ繋いでやれば本望だろう。
'92.8
さて、再び時間は一年半を経過した。あれからまた少しだが変化が起きた。まず IIfx にディスクが付いた。アメリカの販売店から10万円近くで512MBの富士通製を購入し、内蔵させたのだ。これによってIIfxから追い出された80MB Quantum 80 LPSは SE に移動し、これまた無理やり内蔵させられてしまった。これによって今まで長らく働いてくれていたTOMATOディスクの35msシークに足を引かれることが無くなり、SEのスループットが若干上がったのは嬉しい。
それからIIfxもさっさと加速されてしまった。本当はアクセラレータが欲しいところなのだが、68040アクセラレータがどんなに市場に出回ってもやはりIIfx用はマイナーな存在である。唯一TOKAMAC IIfx 040/40MHzがあるが、これは日本の販売店から買うと30万円近くする代物で、ちょっと手が出ない。あとはRadius Rocketであり、これは安価だがせいぜい33MHzと低速である。結局中途半端で気に入ったものがなく、何と水晶発信子の交換によるクロックアップを行った。現在 50MHz で動作している。但し68030は基本周波数の倍数のクロックを外部から供給する必要があるので、100MHzの水晶を買うことになる。これが民生品ではまず存在しないもので、仕方なくNIFTYで同じくクロックアップをした人の情報をたどって店を探した。コスト的には一万円弱と高価であるが、障害も少なく確実にスピードアップすると言うことで決めた。ちなみに一万円程度で110MHz,120MHz などもあるようだが試していない。互換性は殆ど問題ないが、SoundManager3.0でちょっと音がおかしくなる。また、Apple DiskCopy4.2がおかしくなった。
それからメモリを追加して 32MB 構成とした。メモリはInternetの個人売買で中古のものを16MBずつ$450辺りで別々に購入した。合計10万円程度である。最後におまけでPro Audio System という16bit/44KHz stereoで録音再生の出来るNuBUSボードを購入した。これとSoundEdit Proの組み合せでうまく音が扱えるはず。このボードにはMIDIのチップも載っているのだけれど、これを使うドライバが付いていない。
さて、私のホームマシン、SEについては大きな変化がある。遂にアクセラレータを更改したのだ。今までのRadius SE 16ではマックライトなどによる日本語ワープロの動作が遅くなってきたので、主目的は速度向上である。いろいろ選択肢はあったと思うが丁度新しく出たTranswarp 1340cを買った。68030+68882/40MHz 128Kcacheと言う構成で$560と安価である。この価格ながらRAMはアクセラレータボード上に載せ、DRAMの速度にあわせてアクセスタイムを設定できる。一応16MBまでのメモリ拡張も可能と言うことで、この性能、機能でこの価格はよしと踏んで発注した。現在その環境でメモリは4MB構成のままで原稿を書いているが漢字Talk6でのワープロ作業に関しては全くストレスがなくなった。一部のアプリケーションはスクロールなどの速度が上がりすぎて逆に扱いにくくなる程だ。音も普通のものは割れない。当然一部のゲームは音割れするが、これはまあ仕方がない。ただSoundEditが音割れするのは残念だった。ドキュメントによるとAppleFileExchenge, AppleDiskCopy4.2は動作しないとあるが、実際にはAFEは全く問題無く働くし、DiskCopyはキャッシュさえ外せば問題無いようだ。試しに16MBメモリ構成で試してみたが、マニュアルにある通りアプリケーションヒープが4MB以上取れないとか、メモリの取り方が少しおかしいとか問題はあるが、使えないことはない。しかし1340cについているCPUは680EC30であり、すなわちMMUが付いていない。だから原理的にConnectixのCompact Virtualによる16MBメモリモデルへの移行は不可能となる。Applied Engineeringがメモリ管理をうまくするようにinitを直してくれることを期待するしかない。ただ、試しに入れてみた英語版System7.0でも比較的快適に動作するので、とりあえず漢字Talk7への移行を考えてもいいかも知れない。最終的に私の中でこのアクセラレータを選んだ結果が出るのはもうしばらく先のことだろう。
'94.1
あれから数カ月しか経っていないが遂にMacintoshにも大きな変化が起きた。プロセッサアーキテクチャの更改、つまりPowerMacの発売である。過去にAppleは非常に強い力でサードベンダーの開発環境をコントロールしてきた。これによってMotolora 68000 から 68020 への移行に伴う 32bit システムへの移行、Color QuickDraw, Multisize screen など主要ソフトウェアの大改造、System7 で採用した 32bit addressing へのプログラム環境の移行などをコントロールし、成功させてきた。これらが実績となり、今ではデベロッパはますますAppleのガイドラインを守るようになっている。この状況の中、PowerPCへのアーキテクチャ移行を行ったのだ。勿論まだまだエミュレート技術で実行している段階だが、今後 Native code に移行して行くだろう。何よりAppleとIBMはPowerPCに関しては非常にうまくマーケティングを行い、業界ではこの移行に対してネガティブな話を殆ど聞かない。ジョブスなら絶対こんなにうまくやらない。彼なら突然発表して一週間で1万台の予約をとって二カ月後にアナリストから一斉に叩かれるくらい素晴らしいデビューをさせてくれるだろう。Appleはこんなにも成功してしまったのだと思う。その上 Apple は先日以来 IBM やあちこちのメーカとOSのライセンス契約をしている。遂にOSの切り売りをするメーカになってしまった。これからどうなる事やら。
業界話は良いとして、私個人にとっては非常に大きな事件が起きた。SE用に買ったTransWarpアクセラレータのメーカ、Applied Engineering が倒産したのだ。AEはApple II の頃からAppleを支えてきたサードパーティの一つだそうで、私が知っている限りでもSCSIにつなぐ FDHD SuperDrive などマニア受けしそうないわゆる隙間商品をいくらか作っていた。今後のサポートが無くなってしまうわけで、非常に残念だ。
アクセラレータは高価で、なかなか機種変更をしないMacintoshの寿命を更に伸ばすための有効な手段として Macintosh の世界では重要な分野だった。しかしこの頃の Macintosh の低価格化と頻繁な機種変更のせいでアクセラレータメーカが生き残ることはかなり難しくなっていたようだ。Doveはさっさとアクセラレータ市場から撤退してしまったし、Novyは半年前くらいに倒産した。(OEM供給は続けているようだが。)古くから 9inch スクリーンの Macintosh をサポートし、128K すらサポート対象として常に市場最高速の処理系を実装してきた Gemini シリーズのTotal Systems もAEとほぼ同時期に倒産した。結局 MacII 以降のモジュラータイプを主としてサポートしてきた3社、つまり TurboCache , PowerCache の DayStarと、Rocket のRadius 、TokaMac だけが現在生き残っている。(実はUniversal TurboCache にはSE用のアダプタもある事はある。)
遂にコンパクトMacの時代は本当に終ってしまったようで、詰まらない時代になってしまったなと実感した。
IIfx の方は遂に念願かなって RastorOPS24STV を購入した。Internet の中古販売で $400 だったが、相手はPLI fastSCSI2ボードとRastorOPS264を購入したAlexander Steireである。ただ24STVはちょっと不都合があって、少々使い込まれた結果 RCA ジャックのアース側の接点が基板から剥がれていたようだ。自力で半田付けし直して対処したが、その旨をAlexに書いて、少々のクレームと共に送り付けた。しかしいまだに返事がこない。今まで使っていた RastorOPS264 はこれで不要になったので、職場の人に1万円で売り渡してしまった。
とにかくその後はMacRecorderを用いた音声取込みが少々おかしいのだが、それを除くと正しく動いていて、新しい MediaGrabber でMovie取込みもちゃんと働く。ただ 10fps 位の速度で 160*120 サイズを取り込もうと思ったらどうしてもメモリに書き込ませる必要がある。そのことを考慮して用意しておいた32MBメモリなのであったが、どうしようもなく短い時間で使い切ってしまう。そういう意味では Video Spigotの方が向いているなと思う。これを回避するためにとにかくRAM Doubler を試してみようかと思っている。しかし良く考えてみたらVideo Spigotはもう2年も借りっぱなしだ。どうしようか、、、
Video Spigotを外したので、ようやく IIfx のスロットが一つ空いた。現在 ASante Ethernet , fastSCSI2 , 8.24 video , 24STV , PAS16 というラインアップである。PAS16 が殆ど生きていないのが悲しい。24STVと組み合せてのステレオ録音を試してみたい。
'94.5 Yasu.
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