トラブルとメンテナンス

CBXのような古いバイクを乗り続けるには、トラブルと仲良くならないといけません。 そうした知恵を集めてみました。

典型的なトラブル

この CBX ページを運営していて、多くの CBX オーナーのトラブルを聞くうちに、以下のトラブルはどの CBX にも共通して起きる、典型的な問題なのだと判りました。
3500回転あたりで、エンジンからカラカラと妙な音がするようになった。
カムチェーン・テンションに問題があります。
CBXのツインカムはチェーンドライブです。チェーンの伸びを自動的に調整するためにカムチェーン・テンショナーというものがついているのですが、CBXのテンショナーはどうも出来が良くないようで、うまく機能しなくなる傾向にあるようです。
私のCBXはそのためにカムチェーンの張りが低回転域ではうまく行かないようで、3000-3500rpmで、部品がぶつかってカラカラ(チャラチャラ)と音がしました。8000rpm程度の高回転域では遠心力のせいか、音はしません。カムチェーン・テンショナー(スリッパー)を交換する事で収まりました。普通は少々動きが悪くなっても、2万キロごとに調整する程度でうまくいくという話ですが、私の場合はスリッパーが途中で割れており、調整が効きませんでした。
カムチェーン

セルスタータがまわらない。
セルスタータの内側にオイルが入り込んでいるかチェックして下さい。
セルスタータの動力を取り出している部分のベアリングと、それとエンジンをシールしているゴムが硬化してエンジンオイルがセルスタータの中にべったり入り込んでいる場合が多くあります。
うまくまわらない場合は一度セルスタータを開けてチェックして下さい。

ハンドルがぶれる。
CBX のフロントは振れる傾向があります。 雑誌の旧車インプレとして「ゆるい下り坂などで、アクセルを急に戻すようなことをするとハンドルがぶれることがある」という評価もあったようです。 多くのオーナーが国を問わず同種の報告をしています。
どちらかに曲がろうとする、というようなものではなくて、低速の下り坂で手放しで転がすとハンドルが振れはじめて止まらなくなる、という種類のものです。(安田)
50-60Km/h位でハンドルから手を離した状態(エンジンブレーキのかかった状態)で、ハンドルバー端で20cmくらいの振幅で段々と増幅し、振り落とされるかと思うくらいブレてました。(旭川のFujiiさん)
タイヤを交換したり、いろいろ対策はあるようですが、香川の Y さんらが指摘しているような、フロント回りの全体的剛性不足に原因があるようです。
安田はステアリングベアリングをテーパーローラータイプのものに変えてみたところ、嘘のようにまっすぐ走りました。前に一度純正のボールタイプのものに変えたのですが変化はなかったので、タイヤを変えて微妙なバランスポイントを探すより、ベアリングを剛性の出せるローラータイプに交換するのが良いと思います。(まさみさんからも同様の報告を貰っています。)
交換したのは RCエンジニアリングの SSH-750 というベアリングです。


これは故障ではありません

突然ブレーキが良く効くようになった。
喜んではいけません。恐らくブレーキパッドがなくなりかけているのです。
私の経験ではブレーキパッドがなくなってしまい、効かなくなる直前に、ほんの少しの間だけ急に良く効くようになりました。早くバイク屋さんでブレーキパッドの減りを確認してもらう事をお勧めします。

突然ブレーキが効かなくなり、掛けると「ジャー」と音がするようになった。
これは単にブレーキパッドを使い切ってしまったのだと思います。交換しましょう。あまりこの状態で無理にブレーキを掛け続けると、ブレーキ板を痛めますので、問題無い方のブレーキを使ってゆっくりバイク屋さんに行きましょう。

しばらく走っているとブレーキが頼りなくなる。
ブレーキパッドの減りを確認して下さい。
ブレーキレバーの感触が頼りなくなる(フニャフニャになる、握り切ってしまう)のは、ブレーキをかけたときの熱がブレーキフルードやホースに伝わって膨張し、圧力が逃げやすくなるからのようです。 ブレーキパッドが減ると発熱量が増えるのか、熱がフルードに伝わりやすくなるのか、あっと言う間(夏でフルブレーキング数十回程度)にフニャフニャになります。ブレーキパッドを交換すると、かなり改善する場合が多いようです。
念の為に書きますが、これはブレーキパッドが減ってブレーキが効かなくなっている訳ではありません。本当に減り切って効かなくなるのはまだ先です。単に熱の問題で握った圧力がブレーキまで届いていないだけです。
フルード、ホース類を交換すると言う方法もあるようですが、そもそも何をしても強めのブレーキングを繰り返している限り、この現象は CBX (ないしはインボードディスクブレーキ)からは無くならないと思います。過度のパーツ交換は車検の問題もありますし。
メリハリの効いた(パッと握る、減速したらサッと離す)、ブレーキングを心がけるのが正解と思います。前ブレーキに頼りすぎたり、無意味にノロノロ減速したりしない事が大切です。
インボード・ディスク・ブレーキ


その他の故障事例

ギャップを越えるとエンジンが止まる。
エンジンがクレームになってホンダに送り返し、載せ替えたのですが、配線の取り回しが悪く、走行中のギャップがあるとチェーンが配線に触れ ショートして止まるという珍しいトラブルがありました。
調べる時は、どこを計測しても、短絡してないのでなかなか原因がつかめませんでした。
(さぬきうどん仙人様からの情報です)

後ろのサスペンションの動きが悪すぎる。
リアサスのプロリンクに使われているリンクには、力がかかりすぎるためベアリングが使えず、平軸受けになっています。勿論グリスが塗られていますが、すぐに焼き切れて痛みはじめます。
こうなると体重 60Kg の僕が座ったくらいでは沈みもしない程に動きが悪くなるのですが、困ったことに軸受けを交換するしか対応策はありません。難な事に、私の場合は交換してもしなやかに動くのは 2000 Km 程度で、5000Km くらいまでにはまた渋くなります。
プロリンク・サスペンション

リアのプロリンク部が非常に弱い
リアのプロリンク部分は非常に弱いようです。
峠で転倒した後(今でも生駒は二輪通行禁止でしょうか?)、帰ってみるとなぜかシャコタンに。リンクが曲がってるとのことで交換したことがあります。
(香川の Y 様からの情報です。)
プロリンク・サスペンション

エンジンが温まると止まる
不調原因はたくさん有り得ますが、安田の場合はいわゆる二次エアの吸い込みでこの現象が出ました。
低回転でゆっくり走る場合には問題無いのですが、少し回すなりして一定以上に熱くなると、不整爆発のようなゴロつきが出てアイドリングがなくなり、2000rpm 程度でもストンと止まってしまいます。 この場合、冷えるまでは再始動もできない状態になります。 その代わり冷えると何事もなかったかのように元通り動きます。 これが確実に再現します。
結果的に、洩れていたのはインシュレータ回りだったようです。キャブレターを一度分解掃除してもらったときに付け外ししてますから、隙間ができたのでしょう。 インシュレータは内部がアルミですが O リングとゴム部品は熱と経年変化でかなり痛んでいる場合があり得ます。
私の場合はこのインシュレータと接合面の O リングを交換することで直りました。


おまけ(改造チューン編)

実は僕は CBX を無改造で乗っていました。
というわけで、ここに書いているのはせいぜい調整の範囲です。他にも情報を募集しています。
オプションパーツには何があるのか?
私も良く知りませんが、少なくとも当時当たり前に存在していたエンジンガードはあります。私の CBX Integra は付けています。これで飛ばしていたのですから笑えます。でもそのせいで立ちゴケしてもクランクケースに傷は全く付きません。(私は立ちゴケしないのですが、兄が何度もやってました。)
当時当たり前だったオプションであるスノーチェーン用のフロントフェンダーも勿論あっただろうと思いますが、これは確認していません。
Integra のカウルは CBX のオプションではなく、Integra 自体が全く別の車種として登録されています。普通の CBX にカウルだけ取りつけても車検は通りませんのでご注意下さい。
エンジンガード フェアリング

オーバーサイズのタイヤ、ラジアルタイヤは good?
元々 CBX のホイールサイズは 3.60-18, 4.10-18 と、今から見れば細いものです。
ワンサイズオーバーのタイヤを履かせることもできますが、それをすると本来 CBX が持つヒラヒラ感が薄れます。そのかわり路面にべったり貼り付いてコーナリングするようになります。その方が好みだと言うのでない限りはお勧めできません。
元々バイアスタイヤ設計なので、ラジアルタイヤを履かせると、細かいショックを吸収できなくなり、手首をいためるなど問題が出るかも知れません。
タイヤ

コーナリングの最中にすぐ底を擦る。
いまどき CBX で飛ばすのはいけません、と言うのもなんですね。。。 そう悪くないスポーツバイクだと思いますし、ある程度ペースを上げてやって こそ CBX とも思います。
しかし CBX は今時の単車に較べると圧倒的に最大バンク角は小さくなっています。 擦る時は最初にセンタースタンドとマフラーの腹(底で 4 本がつながって 大きくなっている部分の斜め部分)が擦ります。 (因みに少々擦っても穴は開きません。相当に丈夫です。) その直後にステップが擦るでしょう。 ノーマルのまま対応したければ、まず車体が沈まないようにする事です。 フロント、リア共にサスペンションのエア圧を徐々に上げてトライすれば、 そのうち擦らなくなるでしょう。その代わり車体の反応からは、本来のしなやかさが消えていきます。
それで駄目ならサイズオーバーのタイヤを履かせれば少しましになりますが、今度は本来のヒラヒラ感が無くなり、かえって曲がりにくくなります。(すぐ上を参照)
何よりコーナリングの方法を変えて、バンクさせずに済む乗り方を身につける事が大切という事でしょうか。
センタースタンドを外してマフラーとステップを替えれば相当バンク角が稼げるはずですが、私はやった事がありません。
サスペンション

400Fのフロント・ディスクブレーキを 550F のダブルに替えられないか?
私の周囲にやったやつは居ませんでしたが、フロント周りはほぼ同じなので、パーツ交換だけで取り付けられると思いますし、実際やっている人もおられます。どうしても制動力が欲しい場合には良いかもしれません。(私は過去の 550F のインプレッション記事で、ダブルのブレーキシステムは制動力が増したと読んだ記憶があります。)勿論車検の問題があります。
ただし、ただでさえ重量過多の傾向があるインボードですので、550Fのダブルは、低速でハンドリングを重くし、扱いに難があるという話をオーストラリアの Phil さんから貰っています。彼は最終的にステアリングヘッドのベアリングをテーパード・ローラーに替えて対策しているそうです。(オーストラリアの法制度については知りません)
ダブルに替えて文句無し、と言うわけにはいかないようです。
インボード・ディスク・ブレーキ

ゆったり乗りたいのだがポジションがきつい。
CBX のポジションはいまどきの感覚では中途半端に思えるでしょう。 ツーリングをするにはもう少し体が起きたポジションの方が良いようです。
CBX は教習車としても良く使われました。CBX400K と言う型式のそれは、電装など以外ではハンドルの位置が異なっています。2cmほど高いのです。 これがツーリング向けポジションには良いかも知れません。
但しブレーキホースやクラッチワイヤーなどの長さが軒並み合わなくなりますから、この辺りをまとめて K モデルのものと交換する必要があるでしょう。
見た目は殆ど判らないのですが、上体の楽さは相当に変わります。
その昔、知人でこれをやって楽に街乗りしている奴がいました。 車検がどうなるのかは聞いてませんでした。
(確か K はミラーも大きかったように覚えていますが、記憶曖昧です。)


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