CBX用語解説

CBX特有の用語や、いまどきのバイクと違う所に関してまとめてみました。
空冷エンジン
CBXのエンジンは空冷です。
そのためいまどきのバイクに比べて、オーバーヒートの可能性が高い事に注意してください。また、空冷エンジンは、その冷却の多くをエンジンオイルに依存しています。エンジンオイルの量、質には常に注意を払いましょう。
良く回す人は冬と夏でオイルを変える方が良いかもしれません。
エンジンオイル オーバーヒート

オーバーヒート
空冷エンジンは風が当らないと全く冷えないので、とにかく走っていないとだめです。渋滞が続く中、空ぶかしなどをやっていると、そのうちエンジンが止まってしまう事もあります。それなりの速度で走っている積もりでも、不必要に低速ギアで走っていると、そのうちヒートします。冷却の多くをエンジンオイルに頼っているので、オイルの量が減ると短時間で極度にヒートしてエンジンが壊れてしまいます。
ヒートしはじめるとアイドリングが上がるなど、幾らか前兆が出ますが、しばらく乗っていたら膝の内側に当たるエンジンヘッドの温度感などで判るようになるでしょう。
私のCBXはヒート時にはエンジンがキンキンきしむ音がしますが、あれの間隔が最短で一秒弱程度でした。冷えると徐々に間隔が長くなっていきます。夏はそんなことを繰り返していましたが、特に問題は出ませんでした。
エンジンオイル 空冷エンジン

回転計
CBXの回転計は機械式で、いまどきの電気式とは違います。特に針の動きかたとして、回転が下がっていくときの追随速度が電気式に比べると相当に遅めです。エンジンそのものは鋭く吹き上がって、鋭く収まっていて、非常に快調だとしても、電気式のメーターを見慣れた目には鋭さが足りないように見えるかもしれません。
このような場合は音で判断するのです。

オーバーレブ
CBXにはレブリミッターなどは付いていませんから、エンジンの回転数が上がりすぎると「ギャーン」と大きな音がします。バルブ・サージングと言って、ピストンヘッドがバルブに衝突している音です。少々ぶつけてもすぐ壊れる訳ではありませんので、余り気にする事はありませんが、常時ギャンギャン鳴るような使い方をしたら壊れるのは当然です。
レブリミッター

レブリミッター
オーバーレブを起こさないようにするために、レッドゾーンあたりでエンジンの回転を落とす仕掛けです。通常はプラグの配線を止めて発火しないようにするとか、アクセルを強制的に絞るとかします。勿論CBXにはこんな下品なものは付いていませんから、オーバーレブさせないようにするしかありません。
オーバーレブ

バルブ
CBXのエンジンは DOHC で、合計16のバルブがあります。このバルブを二本のカムシャフトに付いたカムが叩くわけですが、バルブの頭もカムも叩かれ続けて少しずつすり減ってきます。するとパーツの間隔が開いてしまって、カムがバルブを叩くタイミングが少しずつ遅くなるのですが、これでは設計通りの馬力が出ません。そこでこの間隔をいつか調整する必要があります。
この調整をバルブ間隙(かんげき)の調整と言いますが、私の場合は毎車検ごとにやってもらっていました。CBXのバルブ調整はヘッドカバーを開けて、ネジ回しで調整するタイプのものです。失敗すると手が付けられなくなる場合があるので、出来れば慣れたバイク屋さんにやってもらいましょう。
DOHC

DOHC (ツインカム)
CBXのエンジンレイアウトは直列 4 気筒 DOHC です。気筒当り 4 つのバルブ、つまり合計で 16 のバルブを持っています。気筒ごとに独立したキャブレターをもち、二本のカムシャフトはチェーンでドライブされています。
バルブ キャブレター カムチェーン

カムチェーン
CBXのDOHCが持つ二本のカムシャフトはチェーンでドライブされています。いまどきのスポーツバイクはギアでドライブされています。ギアドライブは非常に精密な加工が必要なので、当時は一般にバイクのカムシャフトはチェーンでドライブされていました。
車輪のドライブに使われるチェーンに比べて、一般に伸びにくいチェーンが使われていますが、それでもやはり伸びます。伸びてもなおかつたるまないように、常に一定の張りを与えるために、チェーンを押さえつけるようにテンショナーが付いています。擦り付けるようなパーツだからか、スリッパーとも言われます。テンショナーは自動調整機能を持っているので、普段は気にする必要はありません。
ところがこの新機構はどうもうまく働かず、よく調子が悪くなります。3500回転あたりでチャラチャラと異音がするようになったら、カムチェーンとテンショナーを疑いましょう。分解して手で少し作業してやるとちゃんと動くようになる場合もあるそうですが、後の部品はこのあたりの対策が施されたようですから、新しいパーツに交換すると解決する可能性があります。
DOHC

エアクリーナー
CBXのエアクリーナーは、古いバイクにありがちなスポンジにオイルを染み込ませたものではなく、四輪車のようなペーパーフィルターです。詰まってきた(と感じた)ら、せいぜいはたくか、掃除機か、ブロアで飛ばす程度しか対策がありません。
私はそういう場合は、エアクリーナーを取り外し、きれいに掃除して砂やホコリのあまりない環境で回してみて、クリーナーのせいで回らないようなことになっていないか確認していました。
疑わしい場合は思い切って交換するのが精神安定上良いように思います。

アイドリング
CBXは12,000rpm程度が回転数の上限ですから、相対的にアイドリング回転数もいまどきの高回転エンジンよりは低いです。1100rpmから1300rpm程度でしょうか。 (私はちょい乗りをしなかったので限界まで下げていました。)
空冷エンジンですので温まれば自然にアイドリングは上がりますし、逆の事もあります。 上がり過ぎないようにすると暖まるまではエンストしやすくなります。私は冬場の走りはじめは停車時にもアクセルを戻しきらずに保持して対応していました。
アイドリングの調整はキャブレターの背面にあり、手を伸ばせば何とか届くところにある、黒いプラスティックのつまみが付いたネジを回すことで行います。それ以外のキャブレターのネジは触ってはいけません。
市街地を走っているだけで、オーバーヒートするような場合は、アイドリングが高すぎる場合があります。空冷エンジンは走って風を当てないと全く冷えないので、停車中のアイドリングが高すぎる場合はオーバーヒートしやすい傾向が出たりします。
空冷エンジン キャブレター

キャブレター
CBXのキャブレターは負圧式 CV キャブレターです。気筒ごとに独立したもので、アイドリング調整ネジ以外の部分は触ってはいけません。四気筒の四連キャブなんてバキュームメーター(負圧計)がなければプロでも調整できるもんじゃありませんので。
いまどきのバイクと違って CBX (特に400)は非常にスポーツ向けの設定になっています。最大出力を最適回転数で出す事が第一になっており、その設定に余裕は余りありません。普段は余りそういう事を感じなくて済むのですが、例えば高度が上がって気圧が変わると、うまく回らなくなります。
私の場合だと、富士山に行ったときは毎度、4合め近辺で回らなくなり、出力が上がらなくなりました。降りていくとちゃんと回りますから故障ではありません。
これがいまどきのバイクだと嘘のようにちゃんと登り切るからたいした物です。

エンジンオイル
CBXは空冷エンジンですから、冷却の多くの部分をエンジンオイルに頼っています。オイル不足で走るとすぐにオーバーヒートしてエンジンを壊してしまいますから注意しましょう。品質も良い目のものをこまめに変えてやるのが良いと思います。特にもう CBX のエンジンはかなり古くなっていますから、大事にして損はないと思います。
エンジンオイルには、どの温度帯で正しく機能するかを示す記号が振られています。10W-40, 20W-50 などと言うものがそれです。
私の場合は冬場に短距離を走ることが無かったので、一年中高温用の20W-50を入れていました。単純に当時の ULTRA GP オイル(品質の割りに高い製品)では 10W-40 を入れて飛ばすと、そのうち青い煙を出してオーバーヒートしたからです。20W-50ではそれが起きませんでした。良く冷えるようになるわけではなく、温度が上がっても潤滑能力が下がらないだけですから、結果的には高温にさらしている事は一緒です。エンジンをいたわりたければ標準のオイルを入れて、ヒートしすぎるほどには回さない事が一番なのは当然です。
空冷エンジン オーバーヒート

オイルクーラー
CBXにはオイルクーラーがあり、こことエンジン室内でオイルを循環させてオイルを冷却しています。カタチがラジエータと似ていますが、中で回っているのは水ではなくてエンジンオイルです。
いまどきのバイクは水冷なので、エンジンオイルの温度そのものがさほど上がらず、オイルクーラーは空冷エンジンほどは重要ではなくなっているかもしれませんが、当時は有効な冷却装置でした。
因みにCBX発表当時はオイルクーラーは市販車が乗せるようなものではなかったので、お役所対策にオイルリザーブタンクなどと呼ばれており、サイズも小さなものが付いています。
エンジンオイル 空冷エンジン

インボードディスクブレーキ
ホンダは僅かの期間だけ、鋳鉄製のディスクをカバーしたインボード・ディスクブレーキを採用していました。重く、熱がこもりやすい構造なのを、軽量のブーメラン・コムスター・ホイールを開発したり、ディスクをベンチレーテッドにしたりと、ずいぶん苦労して実用化しました。
それもこれも、ブレーキタッチを良くするためで、実際コーナリングの最中ですら前後共にブレーキを掛けられるほど、コントロールしやすいものです。私はS字の切り返しのきっかけに前ブレーキを少し握るというようなことを良くしました。どしゃ降りは駄目ですが、軽い雨なら制動力をかなり維持できます。
ただし普通に握った時の制動力は、いまどきのステンレス製に比べるとずいぶん弱めです。思い切り握れば充分効きますが。
しかし苦労の甲斐無く、インボードシステムは CBX に始まり、VF,VT,MVXらに採用されただけで、CBRには採用されず、それ以降も使われませんでした。CBX 550F のフロントには、インボードが左右両側、つまりダブルで装着されていました。
鋳鉄製ディスク・ブレーキ ブーメラン・コムスター

鋳鉄製ディスク・ブレーキ
バイクのディスクブレーキには通常ステンレスが使われますが、これは軽量さと、むき出しになるために錆びない事が、外見上好まれたためです。外から見えない四輪車の場合は鉄製が普通です。
鋳鉄の美点は、その圧力に素直な制動力の変化、つまりタッチと呼ばれる部分です。しかしすぐ錆びて赤茶色の粉がいっぱい出ます。これを隠すために CBX ではブレーキ全体をカバーしたのです。当然冷却には不利で、そのためもあって高価ですがベンチレーティッドのブレーキ板を採用しています。これは板を二枚合わせにして間に風穴を開け、扇風機のように風を通して冷却するものです。
この鋳鉄ディスク板、ベンチレーティッドの組み合わせは自動車や電車で、昔からずっと普通に使われ続けており、技術的には決して特別なものではありません。
インボードディスクブレーキ ブーメラン・コムスター

ブーメラン・コムスター
この頃ホンダが好んで採用していた、コムスター・ホイールの一種です。スポークの代わりに張ったアルミ板の形が、ブーメラン型の板を使ったのでこの名前が付いています。CBX,VT,VF,MVXなど、インボード・ディスクブレーキを採用した機種に用いました。
インボードディスクブレーキ コムスター・ホイール

コムスター・ホイール
ある時から、各メーカーとも、スポーツバイクはその剛性とデザイン上のカッコ良さから、伝統的なスポーク・ホイールに代わって、キャスト・ホイールを採用しはじめました。(実際、いち早くキャスト・ホイールを採用したKAWASAKI Z400FXなどは人気がありました。) しかしホンダは、スポーク・ホイールの方が軽量であることから、安易にキャスト・ホイールへの移行を行いませんでした。スポークのように針金ではなく、アルミの板を数枚、放射状に張って、軽さと剛性を両立させたコムスター・ホイールを開発して、多くの機種に採用したのです。
CBXはこの頃のバイクですが、インボード・ユニットとの関係で、通常のコムスター・ホイールの形状を取れず、ブーメラン・コムスターとなりました。
コムスターはほぼCBXの頃が最終で、インボードを止めたCBRではホンダも遂に通常のキャストホイールを採用し、全てキャスト・ホイールへと移行しました。インボード・ブレーキを長く使い続けたVTだけがしばらく続きましたが。
インボードディスクブレーキ ブーメラン・コムスター

サスペンション
CBXのサスペンション・ユニットは前後共にセミエアサスです。空気圧によるアシストが行われており、その圧力を調整する事で反発力の強弱が設定できます。
前の左右サスペンションはエアチューブでつながれていますので、片側にしかバルブがありません。これは CBX 特有ではなく、当時のセミエアサスでは普通のことです。今時のバイクはこうして左右調整しなくても良くなったようで、左右のサスペンションを結ぶような仕掛けは無くなり、別々に調整する場合が多いようです。
前輪、後輪ともにかなりの調整範囲があり、これを合わせるだけでかなり乗り味が変わります。飛ばそうと思っている人や、コーナリングで底をするという人は調整をお勧めします。圧力をあげることで、コーナリング途中での車体の沈みが抑えられ、底すりが少しはましになります。
前輪の圧力バルブはフォークユニットの頂上部(片側)、後輪はプロリンク・システムですので、車体中央の左側にあります。
前サスペンションにはアンチノーズダイブ、後サスペンションにはプロリンクと、メカニズム的には斬新なものです。
アンチノーズダイブ サスペンション プロリンク

アンチノーズダイブ
ブレーキを握ると前方に重量(慣性力)が掛かり、前サスペンションが沈みます。このノーズダイブは、サスペンションや重量配分を煮詰めると、かなり解消出来るのですが、いまどきより相当に性能の悪い当時のサスペンションではなかなか難しかったのです。
そこで、乱暴ですがブレーキを握ったときに積極的に前サスペンションを突っ張らせて、ダイブさせないという仕掛けがこの頃はやりました。
各社ともこの種の補器を開発しましたが、これのホンダ版が TRAC と呼ばれるシステムで、CBXにはこれが付いています。
しかしすぐに優秀なサスペンションと、そのセッティングだけでノーズダイブを抑え込むようになり、この種の補器は使う必要がなくなりました。
TRAC サスペンション

TRAC
CBXには前輪のブレーキとサスペンション部分に、TRACと呼ばれるアンチノーズダイブのための機構が装備されています。
TRACにはその効き具合を調節するネジが付いており、これを回して4段階に調節できました。しかし最強と最弱の設定は非実用的で、せいぜい中間の2段階のどちらにするか程度しか調節の価値はありません。
(私は常にその強い方に設定していました。)
アンチノーズダイブ サスペンション

プロリンク・サスペンション
CBX以前からホンダがオフロードバイクで試みていたリアサスペンションの形式名です。
このシステムをオンロードモデルで採用したのは 6 気筒の CBX が最初でしょうか 81 年モデルからなのですが 400F の発売の方が早かったかな?CBX400F にも使われ、それ以降長らく使われました。
通常のサスペンションに対して、強く押されたときにより強く反発するようにする事が目的で、スイングアームとショックユニットの間にリンクを入れました。ただ、リンクの受け軸が平軸受けで、ここがすぐに焼き切れて(グリスが逃げてしまって削れてしまって)動きが渋くなってしまい、単なる動かないサスペンションになってしまっています。オーバーホール直後は確かにしなやかに動くのですが、私の場合は数千キロでまた駄目になりました。
サスペンション

スイングアーム
CBXは初めて鉄パイプでない、アルミ鋳造の中空リア・スイングアームを採用しました。プロリンク・サスペンションとの絡みもあるのですが、車体にアルミを大胆に利用したという意味では先駆的な部分です。当時はレーサー向けの技術で、市販車では世界初です。(81 年型の CBX 1000 のリアアームはどんなのだろう)
プロリンク・サスペンション

タイヤ
CBXのタイヤはバイアスタイヤです。ラジアルタイヤではありません。CBXで飛ばしたい人は、どうにかしてラジアルタイヤをはめたくなるかもしれませんが、余りお勧めできません。バイアスタイヤのスポーツタイプで、適合するものを捜す方が良いでしょう。
CBXの頃には市販二輪車でのラジアルタイヤは一般的ではありませんでした。バイアスタイヤだったのです。ラジアルタイヤは非常に剛性が高いのですが、伸縮しない分、ショックを吸収してくれませんから、路面の振動は全てサスペンションにかかってきます。CBXの頃は、サスペンションをそこまでデリケートに作っていませんから、路面振動はタイヤにある程度吸収してもらう設計です。ラジアルに換えると、手首が痛くなるなどの問題が出るかも知れません。
サスペンション

エンジンガード
CBXの数少ないオプションパーツの一つに、エンジンガードがあります。エンジンガードというと、一般にはクランク、シリンダブロックなどを転倒などから守るためのパイプで、フレームにマウントされたものです。昔の白バイなどが付けていたといえば判るでしょうか。CBXの場合は、せいぜい出っ張ったクランクケースだけをガードする、小さ目のものです。
私の Integra はこれが付いていたために、衝突、数回の立ちゴケ(全て前オーナーの兄の所業)にもかかわらず、クランクケースは実に綺麗なままです。CBXの場合は、コケると必ずクランクケースを傷つけますから、自信の無い人にはお勧めです。

フェアリング
CBX400F には日本初認可のフェアリング付きモデル、Integra があります。このフェアリングは当時海外で良く売れていた CB 900F II のフェアリングを車体に合わせて小さくしたようなものです。さすがに良く出来ていて、90Km/hあたりから全く上体に風が当りません。
大きなフェアリングですから、当然ガッチリしたフレームにマウントされています。これで重量が少し増えますが、空気抵抗が減ったため、最高速は Integra の方が数キロ伸びたのです。また、ヘッドライト、電装などがトップブリッジからカウルフレームへのマウントとなり、ステアリング周辺の重量減がステアリングの動きを良くしています。
Integra には巡航を重視したためか、バイクでは珍しいウィンカーキャンセラーが付いていました。ウィンカーを出して、ハンドルをいったん切ってから戻すと、自動的にウィンカーが戻る仕掛けです。結構重宝しました。
550F は国内ではこの Integra モデルのみでした。海外ではフェアリング無しの CBX550F もあります。


This page is administrated by
Yutaka Yasuda. (yasuda@bakkers.org)
[UP]