CBX特有の用語や、いまどきのバイクと違う所に関してまとめてみました。
ヒートしはじめるとアイドリングが上がるなど、幾らか前兆が出ますが、しばらく乗っていたら膝の内側に当たるエンジンヘッドの温度感などで判るようになるでしょう。
私のCBXはヒート時にはエンジンがキンキンきしむ音がしますが、あれの間隔が最短で一秒弱程度でした。冷えると徐々に間隔が長くなっていきます。夏はそんなことを繰り返していましたが、特に問題は出ませんでした。
→エンジンオイル 空冷エンジン
このような場合は音で判断するのです。
→レブリミッター
→オーバーレブ
この調整をバルブ間隙(かんげき)の調整と言いますが、私の場合は毎車検ごとにやってもらっていました。CBXのバルブ調整はヘッドカバーを開けて、ネジ回しで調整するタイプのものです。失敗すると手が付けられなくなる場合があるので、出来れば慣れたバイク屋さんにやってもらいましょう。
→DOHC
→バルブ キャブレター カムチェーン
車輪のドライブに使われるチェーンに比べて、一般に伸びにくいチェーンが使われていますが、それでもやはり伸びます。伸びてもなおかつたるまないように、常に一定の張りを与えるために、チェーンを押さえつけるようにテンショナーが付いています。擦り付けるようなパーツだからか、スリッパーとも言われます。テンショナーは自動調整機能を持っているので、普段は気にする必要はありません。
ところがこの新機構はどうもうまく働かず、よく調子が悪くなります。3500回転あたりでチャラチャラと異音がするようになったら、カムチェーンとテンショナーを疑いましょう。分解して手で少し作業してやるとちゃんと動くようになる場合もあるそうですが、後の部品はこのあたりの対策が施されたようですから、新しいパーツに交換すると解決する可能性があります。
→DOHC
私はそういう場合は、エアクリーナーを取り外し、きれいに掃除して砂やホコリのあまりない環境で回してみて、クリーナーのせいで回らないようなことになっていないか確認していました。
疑わしい場合は思い切って交換するのが精神安定上良いように思います。
空冷エンジンですので温まれば自然にアイドリングは上がりますし、逆の事もあります。
上がり過ぎないようにすると暖まるまではエンストしやすくなります。私は冬場の走りはじめは停車時にもアクセルを戻しきらずに保持して対応していました。
アイドリングの調整はキャブレターの背面にあり、手を伸ばせば何とか届くところにある、黒いプラスティックのつまみが付いたネジを回すことで行います。それ以外のキャブレターのネジは触ってはいけません。
市街地を走っているだけで、オーバーヒートするような場合は、アイドリングが高すぎる場合があります。空冷エンジンは走って風を当てないと全く冷えないので、停車中のアイドリングが高すぎる場合はオーバーヒートしやすい傾向が出たりします。
→空冷エンジン キャブレター
いまどきのバイクと違って CBX (特に400)は非常にスポーツ向けの設定になっています。最大出力を最適回転数で出す事が第一になっており、その設定に余裕は余りありません。普段は余りそういう事を感じなくて済むのですが、例えば高度が上がって気圧が変わると、うまく回らなくなります。
私の場合だと、富士山に行ったときは毎度、4合め近辺で回らなくなり、出力が上がらなくなりました。降りていくとちゃんと回りますから故障ではありません。
これがいまどきのバイクだと嘘のようにちゃんと登り切るからたいした物です。
エンジンオイルには、どの温度帯で正しく機能するかを示す記号が振られています。10W-40, 20W-50 などと言うものがそれです。
私の場合は冬場に短距離を走ることが無かったので、一年中高温用の20W-50を入れていました。単純に当時の ULTRA GP オイル(品質の割りに高い製品)では 10W-40 を入れて飛ばすと、そのうち青い煙を出してオーバーヒートしたからです。20W-50ではそれが起きませんでした。良く冷えるようになるわけではなく、温度が上がっても潤滑能力が下がらないだけですから、結果的には高温にさらしている事は一緒です。エンジンをいたわりたければ標準のオイルを入れて、ヒートしすぎるほどには回さない事が一番なのは当然です。
→空冷エンジン オーバーヒート
いまどきのバイクは水冷なので、エンジンオイルの温度そのものがさほど上がらず、オイルクーラーは空冷エンジンほどは重要ではなくなっているかもしれませんが、当時は有効な冷却装置でした。
因みにCBX発表当時はオイルクーラーは市販車が乗せるようなものではなかったので、お役所対策にオイルリザーブタンクなどと呼ばれており、サイズも小さなものが付いています。
→エンジンオイル 空冷エンジン
それもこれも、ブレーキタッチを良くするためで、実際コーナリングの最中ですら前後共にブレーキを掛けられるほど、コントロールしやすいものです。私はS字の切り返しのきっかけに前ブレーキを少し握るというようなことを良くしました。どしゃ降りは駄目ですが、軽い雨なら制動力をかなり維持できます。
ただし普通に握った時の制動力は、いまどきのステンレス製に比べるとずいぶん弱めです。思い切り握れば充分効きますが。
しかし苦労の甲斐無く、インボードシステムは CBX に始まり、VF,VT,MVXらに採用されただけで、CBRには採用されず、それ以降も使われませんでした。CBX 550F のフロントには、インボードが左右両側、つまりダブルで装着されていました。
→鋳鉄製ディスク・ブレーキ ブーメラン・コムスター
鋳鉄の美点は、その圧力に素直な制動力の変化、つまりタッチと呼ばれる部分です。しかしすぐ錆びて赤茶色の粉がいっぱい出ます。これを隠すために CBX ではブレーキ全体をカバーしたのです。当然冷却には不利で、そのためもあって高価ですがベンチレーティッドのブレーキ板を採用しています。これは板を二枚合わせにして間に風穴を開け、扇風機のように風を通して冷却するものです。
この鋳鉄ディスク板、ベンチレーティッドの組み合わせは自動車や電車で、昔からずっと普通に使われ続けており、技術的には決して特別なものではありません。
→インボードディスクブレーキ ブーメラン・コムスター
→インボードディスクブレーキ コムスター・ホイール
CBXはこの頃のバイクですが、インボード・ユニットとの関係で、通常のコムスター・ホイールの形状を取れず、ブーメラン・コムスターとなりました。
コムスターはほぼCBXの頃が最終で、インボードを止めたCBRではホンダも遂に通常のキャストホイールを採用し、全てキャスト・ホイールへと移行しました。インボード・ブレーキを長く使い続けたVTだけがしばらく続きましたが。
→インボードディスクブレーキ ブーメラン・コムスター
前の左右サスペンションはエアチューブでつながれていますので、片側にしかバルブがありません。これは CBX 特有ではなく、当時のセミエアサスでは普通のことです。今時のバイクはこうして左右調整しなくても良くなったようで、左右のサスペンションを結ぶような仕掛けは無くなり、別々に調整する場合が多いようです。
前輪、後輪ともにかなりの調整範囲があり、これを合わせるだけでかなり乗り味が変わります。飛ばそうと思っている人や、コーナリングで底をするという人は調整をお勧めします。圧力をあげることで、コーナリング途中での車体の沈みが抑えられ、底すりが少しはましになります。
前輪の圧力バルブはフォークユニットの頂上部(片側)、後輪はプロリンク・システムですので、車体中央の左側にあります。
前サスペンションにはアンチノーズダイブ、後サスペンションにはプロリンクと、メカニズム的には斬新なものです。
→アンチノーズダイブ サスペンション プロリンク
そこで、乱暴ですがブレーキを握ったときに積極的に前サスペンションを突っ張らせて、ダイブさせないという仕掛けがこの頃はやりました。
各社ともこの種の補器を開発しましたが、これのホンダ版が TRAC と呼ばれるシステムで、CBXにはこれが付いています。
しかしすぐに優秀なサスペンションと、そのセッティングだけでノーズダイブを抑え込むようになり、この種の補器は使う必要がなくなりました。
→TRAC サスペンション
TRACにはその効き具合を調節するネジが付いており、これを回して4段階に調節できました。しかし最強と最弱の設定は非実用的で、せいぜい中間の2段階のどちらにするか程度しか調節の価値はありません。
(私は常にその強い方に設定していました。)
→アンチノーズダイブ サスペンション
このシステムをオンロードモデルで採用したのは 6 気筒の CBX が最初でしょうか 81 年モデルからなのですが 400F の発売の方が早かったかな?CBX400F にも使われ、それ以降長らく使われました。
通常のサスペンションに対して、強く押されたときにより強く反発するようにする事が目的で、スイングアームとショックユニットの間にリンクを入れました。ただ、リンクの受け軸が平軸受けで、ここがすぐに焼き切れて(グリスが逃げてしまって削れてしまって)動きが渋くなってしまい、単なる動かないサスペンションになってしまっています。オーバーホール直後は確かにしなやかに動くのですが、私の場合は数千キロでまた駄目になりました。
→サスペンション
→プロリンク・サスペンション
CBXの頃には市販二輪車でのラジアルタイヤは一般的ではありませんでした。バイアスタイヤだったのです。ラジアルタイヤは非常に剛性が高いのですが、伸縮しない分、ショックを吸収してくれませんから、路面の振動は全てサスペンションにかかってきます。CBXの頃は、サスペンションをそこまでデリケートに作っていませんから、路面振動はタイヤにある程度吸収してもらう設計です。ラジアルに換えると、手首が痛くなるなどの問題が出るかも知れません。
→サスペンション