ふとしたことで “「海が走るエンドロール」作者たらちねジョンさんインタビュー 映画を撮る65歳「本気のものづくり」描く” という記事(2021.12.09, 好所好日)を読んでしまった。続きを読みたくなったりした。そのときふと、自分も小さなきっかけで少し映画を撮ったことを思い出して Facebook に少し書いた。
少しここにまとめておく。
大学生の頃、友達と映画撮ったりして遊んでたのよね。。大学でカメラ(スクーピック16)が廃棄されてたので拾って動かしたら、、、動いちゃって。。たまにそういう映画みたいなこと、起きるよね、、、
違う、大学卒業した頃だ。少し書いとこう。
廃棄品を見ると何かに使えないか?と思いながら手にしてしまう気分は多くの人が共感してくれると思う。ジャンク屋さん楽しい。その日手に取ったのはアルミケースだった。なんだろう、と思って開けてみると古い映画用のカメラが入っていた。
貰って帰って良く見ると、16mm カメラだった。16mm。業務用だ。アマチュアが使うもんじゃない、という知識くらいはあった(と思う)。しばらく寝かしておいたが、やっぱり気になって動かしてみることにした。ニッカドと思われるバッテリーが付いていたが充電器は無く(ひょっとしたら別の廃棄品の中に混じっていたのに僕が見逃した?)、ただ入っていた小形の電池の規格と枚数から 12V だろうと踏み、回路を当たって割り出したピンに単三乾電池を並べて作った12Vを入れてみた。
シャッターボタンを押したら「ジー」と回り始めた。回り始めてしまった。回っちゃったら仕方が無い。僕はこれを動かすことにした。
保存状態が良かったのか、特におかしなことは無かった。やったことと言えばカバーの接合面にあるスポンジがボロボロになっていたので、密閉性はちょっと諦めて全部掻きだしたくらい。
ただひとつ問題だったのは、周りに誰も 16mm を回したことがあるヤツがいなかったことだ。高校の友達の何人かは 8mm で映画を撮っていたが、僕はそれには関わらなかった。大学生の頃も学園祭があれば必ずそこの映研の上映会に行ってたし、写真趣味はずっと継続してたから、今となっては何故高校生の頃に他の奴らと混じって 8mm に手を出さなかったのは不思議な感じだ。
90年当時、インターネット(というかUSENET)にはほとんど情報がなかったはずで、僕は結局カメラ屋に行って聞いた。カメラ屋のおじさんは、8mm とは違ってフィルムはネガしか(ほぼ)無いこと、つまりネガで撮影してポジフィルムに焼いて上映する必要があることを丁寧に教えてくれた。そしてこのカメラには 100ft しか入らず、100ft とはたったの 3 分だということも。さんぷん!
ネガフィルムが 5000 円近く、現像代が 5000 円近く、ポジがまた5000円近くするという。一本 1.5 万円。それで3分だ!
また8mmだと編集機(スプライサ)などもどこかの部室にあったと思うし、誰かが使ってたと思うのだけれど、さすがに 16mm のものはない。しかもポジの編集なんかできるようになっておらず、全部ネガ編集してポジ焼きに出すという。じゃあちゃんと貼り合わせておかないとダメじゃない。
音にしたって8mmだと磁気ストライプが入ったフィルムがあるから同時録音できるし、継いでからアフレコで音入れしても良い。でも 16mm は磁気なんて入らないから別録音して後で合わせないといけないし、合わせるにしても光学録音するしかないという。そんなのどうやってやるの?とあれこれ聞いたら、結局スタジオを借りてやるしか無いだろうという。それにしてもスタジオの機材なんて使い方に慣れるのに時間掛かるし、そのぶんレンタル料払うくらいならプロの人に出した方が早いよ的な話になってしまう。
冗談でない。そんな金があるはずが無い。
このあたりの事を、そのとき一緒に映画を撮ろうとしていた友達(というか高校のひとつ下の後輩)二人に話してさてどうしたものかと考えた結果、僕らが採ったのはこんな答だった。
つまり、音入れするお金は無いからサイレントでやろう。編集もできないから全編一発撮りで行こう。3分だと短すぎるので24コマ/秒でなく一段下げて16コマで撮ろう。(普通に)再生したときにトコトコした感じになるが、まあそれはそれでサイレント(古いフィルム)みたいで良いだろう。
これで 3 分の映画を、とにかく撮ろう。それを焼いて、上映したい。僕たち三人はそれだけの思いで走り出した。
結局ぼくらはその方針で毎年ゴールデンウィークか夏、つまり友達の一人が京都に帰省するタイミングを狙って映画を撮った。4年かけて4本、全部100ftフィルム1本で、つまり3分だけ。毎年毎年ようあんなしょーもない映画を、構想起こして脚本(絵コンテ)書いて、やったもんだなあ。最後は大阪にロケハンまでやったんだよなあ。
筋書きはあったけどシーンそれぞれ何秒なんて計画はなく、カメラ回しもその場で決めて、カウンターを見ながら足りるか急ぐか気にしながらやってた。めくり(サイレントだから)もその場でお絵かき帳(画用紙)に筆ペンで殴り書きして作りながら撮った。よくあれでちゃんと 3 分になったもんだ。
一本目を上映したとき、そのフィルムから出てきた絵は素晴らしくキレイだった。きっとキレイだろうと思いながら撮った緑の(つまり雑草の)中から主人公が出てくるそのシーンがめちゃくちゃに良い色、そして解像度だった。驚いた。
二本目は色が欲しくてツツジから出てくるように撮った。これもすばらしく鮮やかな色だった。忘れられない。まあ16mmと言えば市民会館くらいでデカいスクリーンに上映するようなものだったから、フィルムと投影機のパフォーマンスは相当に高かったわけで、それをポータブルの投影機とは言え、目の前 3m のフスマに投影したらそりゃあキレイでしょうよ。
うわあ、ゼイタクだなあ、と思った。
懐かしい、二十代の頃の僕らのはなし。まあ、皆こんな感じだったよね。
2022.11.04