「たんぽぽのちえ」を音読する小学二年生は落下傘を知らない

自分のタイムラインにバラバラと書いたことの再掲。残すべきだと思ったので Note とする。(若干の修正あり)

四号(小二)の「音読」宿題とやらで「たんぽぽのちえ」なる小文を読むのを聞く羽目に。適当にしてたら「聞いてる?」と言われ、はいはいと前に座って聞いていると、これがまた卒倒しそうな内容で、、、、(=_=!)

僕が子供の頃にもこの教材だったような気がするんだけど、僕は果たしてこの文章の意味が分かって読んでいたのだろうか。それとも意味を無視して、ただ声を上げていただけなんだろうか。。。

全文は適当に検索したら出てきそうなのでまあ興味のある方はそれで読んで頂くとして、とりあえず驚いたのはタンポポのタネを「らっかさん(落下傘)」にたとえて説明しようとしているところ。

小学校二年生、落下傘知らないだろうに。。。
小さな挿絵はあるけど、それ見てもわかんないよ。。。(人ではなく小包がくくられた落下傘の絵(1.5cm 四方程度)が添えてある、、)

文章としては
「このわた毛の一つ一つは、ひろがると、ちょうどらっかさんのようになります。たんぽぽは、このわた毛についているたねを、ふわふわととばすのです。」
となっている。ここで落下傘初出。

拡がると落下傘のようになる、は、たぶん小学二年生には分からないと思う。落下傘にたとえる意味があるのは「落ちて行く速度を遅くすることが出来る」ものだから。しかし横風を受けて飛んでいくのは凧(たこ)で、落下傘では無い。そしておそらく子供らは口で吹き飛ばすなりした経験から、風が(横から)当たるとタンポポの綿毛は飛んでいくことを(それが何故かは分からないにせよ)知っているだろう。つまりこの落下傘という「知らないもの」を使った「たとえ」は意味が無いと思う。分かりにくくするだけだ。。。

で、このあとタンポポは一旦しおれて倒れるが、しばらくするとまた立ち上がって、背を高くする、という話に続く。ここで更に困ったことに、こんな説明が登場する。

「せいを高くするほうが、わた毛に風がよくあたって、たねをとおくまでとばすことができるからです。」

マテ、それは本当か。
高い方が良く風が当たるから、タネは遠くまで届くのか?
だとしたら落下傘関係無い。
落下傘の話を著者が出したのは、「それが落下速度を遅くする」点に注目したからじゃないのか。つまり長い時間滞空することが出来るから、そのぶん長い時間横風に当たって遠くまで移動することが出来る、という話じゃ無いのか?
続いて

「よく晴れて、風のある日には、わた毛のらっかさんは、いっぱいにひらいて、とおくまでとんでいきます。」

これもおかしい。落下傘は風の強い日に「風をはらんで」一杯に拡がって横に飛んでいくのではない。
それは凧だ。落下傘じゃ無い。機能的に違う。
この「落ちながら横に進む」、つまり「落ちている間だけ、横に進む事が出来る」、だから「ゆっくり落ちるようにすればより遠くまで届く」結果になる、ということを無視して話が進むのは何故だ。

書き手もそこを無視しているし、読み手はまず落下傘そのものを知らない。つまり「たんぽぽのちえ」がいかなるものか、まったく分からないまま、生徒はそれを音読することにならないか?
(これ実際に意味が分かって読んでいる小学二年生どれだけいるんだろう。。)

適当に検索すると、幾らか読解を試みている?教材?指導要領的なもの?が見つかる。が、どれもこれもこの古典物理の実験が必要そうなことを小学二年生が理解できているか、注意を促すものはなかった。
例えば以下。

http://www.yomiken.jp/jissen/entry.php?eid=00052 読み研 | 研究・実践 | 運営委員の実践

http://www.ondoku.sakura.ne.jp/gr2tanpoponotie.html たんぽぽのちえ

http://413sire.web.fc2.com/page003.html たんぽぽのちえ

http://exploredoc.com/doc/8463656/0508たんぽぽのちえ 0508たんぽぽのちえ

こうした分析する前に、それが子供らにどう読めるか、よう考えて見てよ。。。。と思うのは僕だけなのか???経験から「高い方が有利に決まってるじゃない」で終わる話なんだろうか。教科書に書いてあるから正しいんだそれで良いんだ、な思考停止を加速するだけのように思えるのだが。。。それでいいのか。
(この教材を深掘りせえと言う気は無い。難しすぎる。もっと良い教材があるだろう、と思うのみ。)

また、検索して引っ掛かったものはどれもこれも表現上のテクニックに集中しているのがとても気になる。その一方で書かれている事の内容(この場合は「タンポポの知恵(工夫)」の説明)を理解できたかどうかにほぼ注意が払われていないことも気になる。文系とか理系とか言う話ではなく、教育する側の視点としてはバランスが悪すぎる。

というわけで結論。
この小文、根本的にマス教育の教材としては不適だと思う。小学二年生には難しすぎる。分野横断的な学習のきっかけに、タンポポの種の形状と、その効果(遠くに飛ばす)がどのように関係づいているか科学する(観察して、仮説を立てて、実験する)のなら悪くないかも知れないけど。安定した実験はかなり難しいだろうけどね。。。

知人に著者に関する情報などを頂いたので追記。
どうやら書き手は自然科学の人で、ますますこの小文が自然科学への入り口として書かれたものと思われる。

おまけ



Yutaka Yasuda

2016.06.22