車を降りてケーブルカーに乗り、リフトに乗り換えると、はたして予想通り。あじさいは大量に咲いていました。一つの花が人の頭よりはるかに大きいのです。それが何百本と並んでいます。ふたりの好みでもあるガクあじさいが多く、またその色の濃いこと。ひとつの小さな谷筋には一面このガクあじさいが繁っており、全体を深紫色に染めています。きれいです。
上がり切ったところでお寿司を食べ、お茶を飲み、持ってきた漫画(『7年目のセキララ結婚生活』)をふたりでゆっくり読みました。
通り過ぎる人達は、荷物も持たずに山の上で漫画を読んでいる僕たちに奇妙な視線を送りつつ通り過ぎていきますが、まあこれは仕方ありません。
ひとしきり避暑を堪能して、再びリフトに乗って降り始めました。途中リフトのすぐ下をウサギ君がダッシュしたのには驚かされました。余りのスピードにその姿をちゃんと見ることが出来ませんでしたが、丸いシッポが見えたのでウサギには違いないと思います。
リフト駅で地下水が汲みあげられているところがあったので手足を洗いました。売店ではそれが名物なのか黒豆アイスというものが売られており、これも買いました。食べたらなんだかさっぱりして気分が良いです。
しばらくしてからケーブルカーに乗って下まで戻りました。上と下ではずいぶん気温が違います。その暑さに負けて僕らは早々に車に乗って帰途につきました。
帰る途中でスーパーに立ち寄って夕食の材料などを買いましたが、スーパーの出口を出たところで激しい夕立ちにあってしまいました。駐車場まで走りましたが、それでもずいぶん濡れました。しかしこの激しい雨はすぐにやみ、再び帰途についた僕たちの前に大きな虹を作ってくれました。車を停めて外に出ましたが、それは驚くほど大きく、きれいな虹でした。
僕たちのいる場所から虹の向うの空が暗い色になっていたせいで、虹そのものが明るくはっきり見えます。僕たちは車から出て地面の端から端まで大きくまたいで映える虹をしばらく眺めていました。明るい虹は七色の帯が二重に見えることがありますが、この虹では二重の帯の更に外側に、かなり離れてもう一重の帯が見えるのです。
こんな虹を見たのは初めてじゃないでしょうか。まだ少し雨が落ちてくる中、僕は車の外で眺め続けました。
僕らは虹を見ました。きれいなものはこんなにも近くにあります。
'99.10 Yasu.