ONS2013 での Nick McKeown の OpenFlow 用スイッチ ASIC 開発の話

大学の研究者が SDN のためのスイッチ ASIC を作るという。

2013年4月13日の post をまとめておく。(そのつもりで書いた筈なのに、まとめとくのを忘れたらしいので)

Nick は ONS (Open Networking Summit) 2013 で、汎用で柔軟、大規模な SDN チップの必要性とその実現可能性について、恐ろしい現実味をつけてぶちあげた。
しかし一年経った今でも Nick が業界に突きつけたような SDN チップは出ていない。

次の ONS で Nick はまた何かを突きつけてくるんだろうか。
それとも今の SDN 世界ではまだまだしばらく SDN 用にはとても不向きな L2/L3 switch ASIC の流用か、あるいは Netronome のようなアプローチか、はたまた個別のソリューションで都度対応するか、そんな過程をゆらゆらしながら進むのだろうか。
(FM6000 はそれなりに向いているはずなのだけれど苦戦してる模様)

では以下に当時の post 引用。(順序を読みやすく変えています)

=======
今回 ONS 2013 で得た最大の衝撃は最後の最後に Nick McKeown がぶった講演だった。TI と一緒にやった OpenFlow 用のスイッチチップ設計。

“Protocol Independece”, Nick McKeown
http://www.valleytalk.org/wp-content/uploads/2013/04/nick_mckeown.pdf

==
Nick は講演では design exercise と言っており、TI の設計チームと何をどこまでやったのかは分からない。
しかし少なくとも配置まではやったようで、32段(で、かつかなり柔軟な?)パイプラインと、1Mエントリ(40bit幅)のTCAM を載せて +15% 程度の面積増加にとどまる、とまでは試算している。
なお 370M bits の SRAM、10G Ether x 64 port、だそうで。
(冒頭に出したスライド参照)

これは恐るべき発表で、Nick はラチのあかないスイッチベンダーに挑戦状を叩きつけているように見える。
君ら、ノラクラやっている場合じゃないんだよ。ここまでは行けるはずだ。誰だって行けるはずだ。俺だって行けた。で、どうする?と。
「やらないなら俺がやっちゃうよ?」と。

日本だと大学の研究者が「で、どうする?(俺やっちゃうよ?)」とか言ってもたいてい現実味が薄いんだけれど、シリコンバレーで Stanford の人が言うとさすがに冗談でないのだよなあ。。。

(それにしても ONS2013 で Nick に惚れた人は多かったのでは無いか。すごいことをやる。そして洒落者であった。)

==
しかし TI は 32nm あたりでハイエンドのチップ開発をやめたんではないのかと思ったら、今年の一月に 28nm の OMAP を出してる模様。
ただし Fab は UMC。

”TI Debuts 28-nm OMAP 5 Processor at CES", ElectroIQ
http:/electroiq.com/chipworks_real_chips_blog/2012/01/ti-debuts-28-nm-omap-5-processor-at-ces.html

==
UMC は下がり気味とはいえ 2012 年でも三位、といったあたりにいる、のか。

http://electroiq.com/blog/2012/08/top-12-semiconductor-foundries-of-2012/

==
Fulcrum (いま Intel) もかなり似たチップを出している。FM6000。僕はその white paper を過去にざっと読んだのだけれど全然わからなかった。
今回の Nick の発表で少し見えてきたような気がするのでまた読み返してみる。
あと、Juniper もそんな事を感じさせる製品を先週に出しているので、これも中身についてもう少し聞いてみたい。

“ジュニパー、SDN対応のプログラマブル・コアスイッチと管理製品を発表”
http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/1304/25/news088.html

==
(ここだけ 2014.2.12 追記)

上の記事で紹介された Juniper の EX9200 などの製品は Juniper One programmable ASIC と呼ばれているらしい。
http://www.networkworld.com/news/2013/032213-juniper-sdn-268023.html
を見ると、
The One ASIC will support VXLAN and NVGRE
あるいは
The EX9200 will support 1 million MAC addresses, 256k routes, 32,000 VLANs and 256k ACLs. It will support Layer 2/3 switching, MPLS, VPLS, L3VPN, point-to-multipoint, and 50 msec convergence using MPLS Fast Re-Route. とある。相応にでかい。ACL が特にでかいのではないか。

が、余りそれ以降この ASIC の話を聞かない。何故だ。僕が見逃しているだけか。しかしパッと検索しても 2013年の四月近辺の記事しかみつからない。

==
しかしこの ONS2013 での Nick のセッション、(例によってよく見てないのだけれど)ニュースになってないような気がするのだけれど、何故??
Nickのことで記事を探すと出てくるのはオープニングの 007 ショーで演じたボンド(ダニエル・クレイグ)にそっくりだったとかそんな話ばっかり。

“ONS 2013 Round-Up: Highlights from Open Networking Summit”, SDNCentral
http://www.sdncentral.com/news/ons-2013-round-up-highlights/2013/04/

==
ざっくりまとめた中にあったりするのだけれど、特に大きな話としては受け止められていない模様。(まあこれはそのようにさらっと書く記事だからか)

“ONS 2013 Day 2 Highlights Part 2 –On The Ground Reporting”, SDNCentral
http://www.sdncentral.com/news/ons-2013-day-2-highlights-part-2-open-networking-summit/2013/04/

==
2018.11 追記
結果的にこの活動は Barefoot の起業、Tofino チップの出荷として結実した。もちろん Nick は Barefoot の Co-founder である。すごい。なお CTO & Co-founder のPat Bosshart は TI フェローだ。夢のある世界だねえ。



Yutaka Yasuda

2014.02.12