支払いはするっと関西でね

若い世代にとって、現金ではないお金の現実性は、夢にまで出てくるほど高いようだ。

先日知人の女子学生(文学部、四回生)に面白い夢の話を聞かされた。夢、寝ている間に見る、あの他愛のない夢の話だ。

朝起きるといい匂いがして、おかあさんが作った朝ご飯を自分を除いた家族全員がおいしそうに食べている。ああおいしそうだ、おかあさんあたしにも頂戴、というと、ええいいわよ、でも支払いは『するっと関西』でね、と母が答えた、というのだ。

(『するっと関西』は関西、特に大阪地区の多くの地下鉄で使えるプリペイドカード。大阪は東京に比べるとずっと早くから相互乗り入れ、自動改札などに取り組んでいる。どうやらこれは関西全体の傾向でもあるらし。とにかくそこで使えるプリペイドカードは特に大阪市内を移動する人間には非常に便利で、学生をはじめかなり広く普及している。)

あちこちの路線のプリペイドカードをたくさん持つ必要がなく、ただ一枚の万能カードで支払いが出来るという意味で、このカードはNTTテレホンカードよりは電子マネーに近い存在だ。テレホンカード、オレンジカード、Jスルーカード、それらが一つになって欲しい、それには電子マネーしかないのではないか、だから電子マネーが立ち上がるチャンスの一つがここにあるのではないか。なかなか立ち上がらない電子マネーではあるが、いまでもそう考える、夢見る人は多い。
しかしそれすら飛び越えて、家庭内の個人間支払いにまでプリペイドカードを使っているという意味で、彼女の話はなかなか未来的だ。

しかし彼女の話の鍵はそんなところにあるわけではない。この話のミソはその現実感にある。たとえば僕は論理の末にそうした電子マネーの事を考えたり夢見たりする事はあっても、寝ている間の夢に出てくる事はない。僕にとってするっと関西で払う朝食は、夢に見るほど現実的ではないのだ。

今どきの若い世代にとって、既存の現金ではないマネーは、もはや「夢に見るくらい現実的」なのだと思う。面白い。久々にわくわくする、楽しい話だ。



Yutaka Yasuda

2000.02.01