変化のなかで

T先生はポケットベル、PHS、携帯電話への変化が早すぎる、という。
Keywords: [ ポケットベル, PHS ]

T先生が何年か先の現実を今見せて欲しいと言った事がある。携帯電話やPHSなどのように広域の設備インフラに対する先行投資が必要なサービスは、サービス開始から何年かかけて投資回収しなければならない。しかしサービス自体が陳腐化したり人気が無くなったりして、何年後かにはもはや使われなくなっているかも知れない。そうなると投資回収も出来ないまま、事業は破綻してしまう。最近の若い世代が好んで使おうとしているサービスは余りにも移り変わりが激しい。

この話が出てから数カ月後、ポケットベル会社が相次いで倒れた。(東京テレメッセージと関西テレメッセージ) 利用者の激減に耐えられなかったのだ。僅か数年で利用者が学生(それも元々ポケットベル利用者層ではなかった高校生など)を中心に激増し、僅か一年少しで激減した。
PHS も利用者数が膨張した頃に携帯電話との競争が激化し、携帯電話の多機能化や値下げに追われた結果、利用者は携帯電話に移り、事業的に苦しくなっている。現在再編の真最中だ。

若い世代はまるで「消費」するように彼らが注目するポケットベル、PHS、携帯電話などを使ってきた。彼らはまさにインフラ設備から会社まで、全体を消費するように通り過ぎる、これがここしばらくの傾向である。この傾向が現実の設備投資などのタイムスケールと合わないというのがT先生の意見だ。

しかし何年か先の現実を今見せて欲しいと願っているのは計算機屋も同じだ。むしろ情報産業分野ではこの「消費」するような利用者の移り変わりを10年以上前から経験している。では情報技術、産業はどうやってこれに耐えているのだろうか。『開発の傾向』で、少し直観的に単純化して考えてみる。



Yutaka Yasuda

1999.09.09