ダブルクリックは難しいインタフェイスなのか。メディアリッチな端末に似合う、高い自由度と表現力を備えたマン・マシン・インタフェイスは無いのか。
Keywords: [ WWW, ダブルクリック ]
一般的に利用者の裾野が広がるに従って、ユーザインタフェイスについては単純化していかなければならない。簡単に使えることで利用可能な者の範囲を広げようとするからだ。
パソコンも、その利用者の裾野が広がるに従って、メディアリッチになりながらインタフェイスの自由度は下がる傾向にある。今まで何度かパソコンが広がるタイミングがあった。最近のものではネット利用という要求とWindows95というソリューションとしての波だった。余り有効ではなかったが、その一つ前は、(それが町内会の案内だとしても)文書作成という要求にワープロというソリューションだった。
Windows95(というソリューション)は明らかにDOS(同左)より単純な使い方が提示されている。OSもアプリケーションもプレインストールというのは単純化の一つだ。
Windows95のユーザインタフェイスのベースはWindows3.1つまりMotifだ。この時代のGUIに共通の特徴がある。
オーバーラップするマルチウィンドウによる表示
クリック、ドラッグ、ダブルクリックに個別の意味が与えられたアクション
ところが、Windows95システムにとっての一つの大きな目的であったはずのWWWブラウザは上記二つのユーザインタフェイスとは少し違う設計がされている。
1’. 基本的にフルスクリーンとも言えるシングルウィンドウによる表示
2’. クリックのみのアクション
これはMosaicで広く提示されたWebブラウジングのスタイルだ。これにこだわる必要がないのは明らかなのだが、現時点まで全てのブラウザはこのスタイルを踏襲している。変化は全てフルスクリーンとみなせる一つのウィンドウの中で起きているのだ。
このスタイルはしかし同じくハイパーテキストを扱うHyperCardで使われていた。当初Apple User Interface Design のルールから外れていると非難されたりもしたが、開発者であるBill Atkinsonはかたくなにこのスタイルを維持して発表された。(彼の初期のアプリケーションMacPaintもガイドラインを少し外している。)
WWWブラウザのユーザインタフェイスは極端に単純化されているが、だからこそ多くの人に受け入れられたのかも知れない。ダブルクリックは難しいのだ。
こうした単純化への流れはしばらく止まらないかも知れないが、デジタルな世界にはもっと別な解があって良いと僕は考えている。メディアリッチな端末に似合う、高い自由度と表現力を備えたマン・マシン・インタフェイスが今求められている。
1999.04.26