Thin Server は今後ネットの中で重要度を増し、Narrowcastとともに広がっていくだろう。現在の集中コンテンツとRead Onlyユーザという構図から脱却し、Thin Server と Narrowcast という構図へと移行するするのである。
Keywords: [ Cobalt, Macintosh ]
僕はいま Cobalt という製品を勝手に応援している。さまざまな点でこれが気に入っているが、ここでは僕が欲している Thin Server というコンセプトについて書いておきたい。Cobalt はこの Thin Server を指向しているのだ。
Thin Server とは、大規模なネットワークサービスを行なっているサーバと、量的な能力差以外何も変わらない機能を持ち得るネットワークサーバを意味する。これはインターネットにおいて独立したサイトになり得る。このようなサーバは Narrowcast とのマッチングが良い。つまり大きなサーバでは提供し得ない、小規模な情報発信を行なうことが主たる目的である。
Narrowcastとは、その情報サービスの対象者が非常に小数であるかもしれないが、対象者が全世界に分散しているような状況を指向した情報提供の形態である。広域に分散した小数の受信者に向けて情報を提供するには、現時点でネットが最も有効な手段であることは明らかだろう。単純に初期投資が小さくて済むことも大きな理由であるが、現時点でのインターネットの課金構造では、小量のアクセスでありさえすれば、広域に情報を提供するために特別高価な料金を情報提供者が支払う必要がないことも重要である。
Narrowcastが提供するのは、主としてマイノリティではあるが当事者にとっては極めて重大な関心事であるような情報となるだろう。そのような情報はインターネット上に公開しておきさえすれば、強い関心を持ったものから積極的に覗きに来る。現時点では月額数千円の費用で自分のWebページ領域を確保する事ができる。筆者は好みではないが不特定多数に無料で提供されているWebサービスも多く存在する。
そして提供する内容次第では、総量は僅かであるが、本当にその情報を重要とする世界中の人からアクセスがあるだろう。いままでこれほど安価に Narrowcast を現実のものにした環境(メディア)は存在しない。
実際に僕も15年ほど前の国産の単車に関する情報をネット上に提供しているが、現在では世界中からアクセスがある。その単車の所有者をリストアップしているが、25名集まったうち日本人は10名に過ぎない。スゥェーデン、イギリス、ドイツ、ベルギー、ブルガリア、チェコ、オーストラリア、ニュージーランド、チリ、シンガポールなどなど、まさに世界中からコンタクトがある。
現在のところネットにおける情報発信はブロードキャスト的な指向が強い。しかし今後、個人に情報発信の主体が移るとき、必然的にNarrowcast指向が非常に強くなることは間違いない。そして、それを実現するのはThin Serverなのである。
人気コンテンツに群がる多数のRead Onlyのユーザという今の構図は、実に冷めたい。ユーザはそろそろここから卒業しよう。各個人は、それぞれの需要や嗜好に合う情報を、そのためにカスタマイズされたサーバから発信し、交換しよう。そこには人と人が触れあえる温かさがあるから。
1999.03.25