GigaBit Ethernet - 後ろ向きの先端技術

突然我々の前に現れた新技術、GigaBit Ethernet は、しかしその技術は非常に後ろ向きだ。ATMに否定的なユーザが飛びつくと思われる後ろ向きの技術、あまり良い話ではない。
Keywords: [ GigaBit Ethernet ]

1997年、突如として Gigabit Ethernet の話が降ってきた。

それ以前から話はあった。つまりカテゴリ 5 の UTP でどこまで速度を上げられるだろうか、という話だ。僕は 100Mbps 程度がせいぜいで、それ以上は冗談だと考えていたため、ATM の 155Mbps は驚きもしなかったが、1000BaseT が本当になったのには驚いた。

まず一つ、Gigabit Ethernet は決して 1GHz の信号でデータを送っているわけではない。250MHz の信号を 4 ペアの信号線に並列で流している。だから僕の感覚でもそれほど驚くべき事ではない。
(ちなみにこれは僕が注目しているFibre Channelの技術から来ている。)
次に Ethernet の根本を占めている CSMD/SA による回線制御方式における、最小パケット長と最大配線長の関係がある。Fast Ethernet は正直に 100MHz で信号を送り、正直に最大配線長が 1/10 の 200m になった。これが更に 1/10 に短くなれば、もう実用性を損なうレベルにいってしまうため、Gigabit Ethernet は最小パケット長を 64 Bytes から 512 バイトに延長した。足りない部分はパディングすると言うのは凄まじい無駄を諦めれば実現は可能だろうが、短いパケットを複数まとめる機能を提供すると言うのは冗談と思った。そんなのうまく行くわけないじゃないか。まるで PHS のハンドオーバーだ。
しかし最大の驚きはもっと根源的なところで、どうして 1Gbps という超高速の転送に不向きな Ethernet 規格を使うのか、という事だ。

100Mbps Ethernet が登場したときに、ドライバが殆どのそのまま使える、と言うような比較的保守的な理由で、並立していた HP の 100VG any LAN に対して FastEthernet が勝利を収めた。
今同様の理由で、1Gbps Ethernet に三度 Ethernet 規格がほぼそのまま使われようとしている。どう見ても Ethernet の規格はもう限界に来ている。無理せず新しい規格に切り替える方が、長命で、利用価値の高い製品になると思えるのだが、業界の法則はそうはいかない。

今、ATM (LANE v2) の余りの高コストと、その管理の難しさにネをあげて、多くのネットワーク管理者が旧来通りの簡単さを標榜する Gigabit Ethernet に引っ張られている。LAN技術とWAN技術が、通信量の増大とともに融合する、という ATM の宣伝文句が現実のものになるかどうかはまだ判らない。しかし後ろ向きの互換性を理由に Ethernet を選ぶ、と言う構図は、やはり余り面白いものではない。



Yutaka Yasuda

1997.12.18