耳をいじる

耳をいじる。非常に好きなことの一つである。
いや、私に至福の時を与えてくれる行為とまで言えるだろう。
所であなたは、耳をいじる時、何を使うだろうか?私は、断然、綿棒である。そりゃあ、耳かきだって使うには使うが、気持ち良さでは、到底足元にも及ばない。耳かきなど、あまりにも発想と答が安直に過ぎるのだ。
そう、私は綿棒のそのままならなさに魅力を感じる。
そこでまずは、じっと綿棒を眺める。
ああ、耳が痒い。しかし、思い余って、奥の方に入れてしまった時の激痛は恐ろしい。私は、この為に、3回も、耳鼻科に通ったことがある。
耳から血の出てくる恐怖はたまらない。私は、小さい時に、頭を強く打って脳味噌が潰れたら、耳から血が吹き出してくると聞かされたことがあった。 それが今でも頭をよぎる。耳から血が出たからと言って、脳味噌が潰れたわけではないのに。
だが今、この痒みを止める事の出来るのは、この綿棒だけではないか。何を迷う事があるのか?
私の体はそう叫ぶが、私の網膜には容赦なく、血の付いた綿棒が浮かぶ。
こうして、にわかに私の胸は、期待と不安によって高まっていく。
そして、ついには体の欲求に耐えられずに、その綿棒を耳の中に押し込んでしまうのである。
広がる安堵感。耳を塞いでしまうからであろう、私の高鳴っていた鼓動が、ゆっくりと収まっていくのが感じられる。
ああ、何と気持ちの安らぐ瞬間であろう。私の綿棒は、私の目と同じ動きをしながら、次々と、不快なものを私の望むテンポから少しづつ、ずれながらも取り除いていくのである。 こうして私は、耳をいじる行為と、綿棒をますます愛さずにはいられなくなっていくのである。
時として、私自身に対してその刃を向けることがあったとしても。