Cinema Review

クラッシュ

Also Known as:Crash

監督:ポール・ハギス
出演:マット・ディロン、ドン・チードル、サンドラ・ブロック、ブレンダン・フレイザー

LAという大都会で起きるさまざまな出来事。人と人との接触が「事故」の一局面として描かれる。

群像劇である。見た後に強い印象を残してくれる。そういうのは実は個人的には少ない。

何というか、前評判が良かった映画らしい。予告編のきれいさ(LAのフリーウェイをヘッドライトとテイルライトが往き来するシーン)に引っ張られて僕は見た。まあ映画を見る動機なんてのはそんなものだ。果たして予告編で使われたオープニングは、本当に美しかった。そのシーンだけで僕は引き込まれてしまい、ああ見て良かったと思ってしまう。
(僕は LA の(片側)六車線か、もっとあるフリーウェイを流れるテールランプを見た時に、ああキレイと思ったことがあるので、何となくそういう記憶に引っ張られたのかも知れない。)

作品自体はアカデミーで賞を取るくらいに評価されたものだ。僕はその直前に、誰も一緒に行ってくれる人が見つからないまま、諦めて最終上映を一人で見た。

確かに良い作品だと思う。良い役も悪役もなく、さまざまな人がクラッシュ(事故)をきっかけにいろんな人と衝突していく。作品中では人種的な境界での微妙な衝突をはじめとして、ありとあらゆる種類の界面での摩擦に姿を与えていく。映像化とはまさに理屈に姿をあたえる作業だ。その一つ一つのシーンに、いたたまれないツラさを感じる。感じるように作られている。

現代人が都会の生活で多く直面しているであろうストレスを描く時に、そのストレスには救いがない、ただ直面して暮らし続けるしかないというメッセージは映画が伝えるべきものとしては何というか厳しすぎる。もっと救いがあっても良いと思うし、もっと許して貰える部分があっても良いと思う。ただ本作ではそれらはひたすらストレスとして描かれ、救いがあるシーンはむしろ少ない。

僕らは、たとえどんな理由があろうともそれらと同居していかねばならない。それが本作のメッセージだとしたら全く辛い。救いや、逃げ場がない。観客の感情の置き場がどこにも用意されないからだ。

本作は LA の路上での非常に小さな接触事故で幕を閉じる。人種を越えた、世代を超えた、階層を越えた衝突がそこでは起きている。物理的な交通事故を通じて、彼らは否応なく接触させられてしまう。本来なら最も避けたかったその部分に、否応なく触れさせられているのに、何故だか奇妙な安堵を覚えてしまう僕のこの感覚は一体、なんだ。

Report: Yutaka Yasuda (2006.05.06)


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