Cinema Review

コラテラル

監督:マイケル・マン
出演:トム・クルーズ、ジェイミー・フォックス、ジェイダ・ピンケット=スミス

物語は独立・起業を考えているタクシー運転手を淡々と追うところからはじまる。そこで乗せた乗客が実は殺し屋だった。いつもなら淡々と進む筈の殺しのツアーが、今回は始めに狂いが出た。最初の殺しで殺し屋であることが運転手にばれてしまったのだ。そこから話は少しずつ狂い始める。もう後戻りは出来ない。

オープニングから最初の殺人に失敗するあたりまでは実に良い流れだ。そこから少しずつ流れが狂い始める。それでもジャズ親父との問答あたりまでは何とか緊張感を保てる。良い感じだ。その後、娯楽色というのだろうか、ハリウッド色というのだろうか、これが濃くなって行くにしたがってテンションは下がる。激しいアクション、ハラハラするシーンが増えれば増えるほど、緊張感は下がり、ある種リラックスした雰囲気で話が進んでしまうのである。どういうことだ?

ツイステッド』も似たような傾向だ。他にもそういうものは多い。『トランスポーター』のように決定的なターニングポイント(テンション急降下ポイント?)が存在するものもあれば、徐々に落ちてしまってどこが原因だったのかわからなくなるものもある。

本作はどちらかというと判らなくなったタイプで、たぶんタクシー運転手が殺し屋のバッグを投げ捨てたあたりからではないかと思うが定かでない。結局のところ殺し屋君にドン臭さが加算されれば加算されるほどテンションが下がるようだ。

なんとなくそれで思い当たることもある。『LA コンフィデンシャル』も最後に当事者本人によるドンパチになるのは(そこだけ取れば)『インディペンデンス・デイ』と同じだ。結局こうした流れでオチを付けようとするのがハリウッド映画のクセなのだと思うが(アメリカ的価値観なんだろう)、そこに必然性が薄いと急速にフィルムの「絵空事」度が高まってしまうようだ。オチを付けるなら『フォー・ルームス』くらいスパッと切って見せてくれ。

どちらかというと少人数の出演者でタイトに緊迫したストーリー進行ができていただけに惜しい。

Report: Yutaka Yasuda (2005.07.04)


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