Stage Review

七月大歌舞伎

出演:中村翫雀、中村扇雀、中村橋之助、中村福助、中村勘九郎、中村勘太郎


「小さん金五郎」
  金屋橋の金五郎 - 翫雀
  芸妓額の小さん - 扇雀
  広瀬屋新十郎 - 橋之助
  女髪結お鶴 - 福助

「連獅子」
  狂言師右近 後に親獅子の精 - 勘九郎
  狂言師左近 後に子獅子の精 - 勘太郎

「浮かれ心中」
  伊勢屋栄次郎 - 勘九郎
  真間屋おすず・三浦屋帚木 - 福助
  太助 - 橋之助

大阪松竹座
平成12年7月10日 4時15分開演

おもしろい!!!すばらしい!!!
今回の歌舞伎は見てよかった。
中村勘九郎の大爆笑の舞台でちゅう乗り(あえて宙乗りではない)があります。そして勘九郎の息子二人も初めて見られる、というわけで飛びついてチケットを買ってしまいました。

まずは『小さん金五郎』。男女数人がいりみだれ、最後に一人の女性だけが好きな人に振られて悔しがる。台詞がとてもおもしろく、特に振られてしまう福助さんがおもしろい。好きな人の前ではとーっても甘えた声を出してせまっていくのに、他の人には意地悪できっつーい。テレビで流行っている「いーみなーいじゃーん」なんてのも飛び出して、劇場は笑いの渦でした。

そして有名な『連獅子』。勘九郎とその長男の勘太郎が親子獅子です。勘太郎さんはがっちりした体格で、横の勘九郎さんが小柄なのでとても大きく見えます。獅子のきりっとした顔がとてもよく似合っていました。
二人の厳しい表情と、劇場内に響く、ぴったり息の合った六方を踏む音。そして毛振りの豪快な場面。劇場内がしんと静まって、鳥肌がたちます。
子獅子には痛そうな振りがたくさんあります。飛び上がって、あぐらをかくような形で降りる(おしりが痛そう)とか…。これは歌舞伎でしか味わえない感動があります。
途中で出てくる二人の僧のやりとりが緊張をほぐしてくれます。ここには勘九郎さんの次男がでています。長男と次男は期間途中で役を交代します。でも、私としては線の細い次男より長男の方がこの役には合うような気がします。次男の舞台を見ていないのでなんともですが…

最後は大爆笑喜劇の『浮かれ心中』。人を笑わせたり、人に笑われるのが大好きな男の話。世間の話題となるために、かりそめの祝言をし、花魁を身請けし、わざと手鎖三日の刑に服したり。最後には人々を集めて心中しようと考えますが…。
それがもう、勘九郎さん初め、役者さん全員がおもしろくってお腹かかえて笑ってしまいました。福助さん演じる花魁がお盆に茶碗を乗せてきて「お茶飲みますー?」と、お盆をくるーっとひっくり返す。すると茶碗はお盆にくっついているんだけど、アドリブらしくって相手役の橋之助さんが真剣に笑ってしまって「おいらは笑い上戸なんだから…」と苦しんでいました。福助さんはかなりおかしくって要注意です。
最後は死んでしまった男が自分の書いた絵草子に出てくるねずみに乗って空を飛びます。これが本当のちゅう乗りってわけ。

これって本当に歌舞伎なの?って感じだけど、笑うっていうことはとても素敵なことだと思っている私にはとても幸せな半日でした。笑って楽しみ、芸に感動して鳥肌がたち…。
毎日がとても早く過ぎていき、悔しいことや悲しいことがあったり、つまらないことで怒ってしまったり…。「ときめくこと」が大切だと思っている私にとっては、このままではだめ!そんな時にこの歌舞伎を見られました。確かに見終わったらまたいつもと同じ毎日だけれど、肩が軽くなったと言うか、すごくリフレッシュされました。
私は全然歌舞伎に詳しくなんかないし、これが歌舞伎だ!と言われる演目でも居眠りしそうになることがあります。でも、好きな役者さんが何人かいて、その人を見るために年に1・2回は観ています。これでいいんですよね。今は1つの出し物だけを低料金で観ることができます。ああ、私も今回はもう1回ずつ観たいぐらいです。

歌舞伎と聞けば、何だか難しくってとっつきにくい、退屈、なんていう印象があったのは随分前になります。
母親も見たことのない歌舞伎を二人で見てみよう!と思ったのはもう何年前になるんだろう。それまでテレビでも全く見たことがなく、ドラマに出ている役者さんを見たことがあるぐらいでした。
たまたま南座の前を通った時、片岡孝夫と中村勘九郎の舞台があると宣伝していました。孝夫さんは母の好きな役者さん(俳優?)で、勘九郎もテレビのスペシャル番組なんかでよく見ていて、とても楽しいという印象があり、この二人なら見てみたいねー、と軽く考えて前売券を買ってしまった。
そして、歌舞伎初観劇!

それは見たことのない別世界!そしてすっかり惹きこまれてしまいました。孝夫さんはとにかくかっこよく、立ち回りも派手で、なんといっても襖を組み立てた上に立ち、そのまま下の襖が倒れるとか、階段の上で仁王立ちしたままばったり倒れる(階段の下に向かって)とか、文字では表現しにくいけれど、とにかく驚いた!
そして、勘九郎さんは舞台だけでなく、客席まで走り回ってふーふー息を切らして、大爆笑の演目だった。歌舞伎ってこんなに楽しくて分かりやすいものもあるのだと、親子で楽しんでしまいました。
そう、楽しむことが一番なんです。
バレエや宝塚にミュージカル、お芝居、フィギィアスケートに野球観戦と、私が見て素晴らしい、楽しいと思うものはいろいろあります。でも、きっかけは単純だし、ずっと続けて通っているわけでもありません。自分が楽しい、幸せな気分になるために、見たいと思うものを選んでいます。でも、新しいものへのチャレンジも必要ですよね。
しばし、現実を忘れて目の前に広がる別世界へ入りこみましょう。

Report: 元ミス祇園会館 (2000.07.14)


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