Cinema Review

eXistenZ

Also Known as:イグジステンズ

監督:デビッド・クローネンバーグ
出演:ジュード・ロウジェニファー・ジェイソン・リーイアン・ホルムドン・マッケラーウィレム・デフォー


デビットクローネンバーグの久々の新作「イグジステンス」を拝見。クローネンバーグにしては思いのほかのあまりにも分かりやすい展開に少し驚く。骨をピストルに、胎盤をゲームポッドにと人体と機械(ゲーム内で使われる物体及びゲーム機器)を組み合わせたメタファーは当然「融解」「変容」というクローネンバーグフィルムになくてはならない要素であるだけでなく、もちろんそこにはバーチャルリアリティを現実のモノとして追い求める現代の若者の(例えば昨今のフライトシュミレーターマニアの航空機ハイジャックにみられる、あるいはゲームやアニメキャラに対して擬似恋愛してしまうような)世相を映し出しているようにみえる。
主人公達が体内に穴をあけたバイオポートはそこからゲームポッドに繋がれ、時にはテッドバイクルとアレグラゲラーの意志交換の場としてへその緒のような形状で繋がれる。当然のコトながらそれも一つの隠喩であり、自らの意志が「イグジステンス」というRPG上の一人のゲームキャラとして成立してゆくのである。つぎつぎと感染していく様はまるで『ビデオドローム』を彷彿させ、現実と非現実の世界をいったりきたりする中でどれが正しい判断かわからなくなってしまう。
ラストはリアリストとアンリアリストの対立のなかで、混沌としたカオスの世界が繰り広げられ、現実と非現実、実存主義と非現実主義、対立項が融合し一面化する彼のフィルムの定説どうりに、コトが展開する。何事も表裏一体なのだということなのだろうか。
ジュードロウが口にする両生類もそこは(対立項が融合し一面化するという上において、魚類と爬虫類の中間点に位置する)両生類でなければならないという理屈がとおっているしそういう意味では全てが計算づくなのであろう。もはやアンドロギュノスは彼のフィルムには不可欠なアイテムかもしれない。

ところで今回は若い女性ファンがあちらこちらにちらほら見うけられたのでついにクローネンバーグも若い女性ファンを獲得したかと思い喜んでいたが、ぬか喜びだった。その大半はジュードロウファンらしい。だって、この映画を見る直前までハンバーガーを食べているんだもの。

Report: Yuko Oshima (2000.05.30)


[ Search ]