Comic Review

僕は天使ぢゃないよ。

作者:小野塚 カホリ

ボーイズラブ物。同名の作品や、「嫌。」「セルロイドパラダイス」などの短編を含む。

現在幅広い活動を広げつつある女性漫画家小野塚カホリのJuneデビュー作品。
小野塚カホリの漫画を初めて手にしたのは高校3年の時であろうか。たまたまその時後輩に借りた安野モヨコという漫画家の作品(シゲタが出てくる、あの作品である)を読んで、暇つぶしにしかならねぇなと思っていた頃に(借りておきながらこんな台詞吐くな)雑誌「Cutie」の系列である「Cutie Comic」が創刊され、安野モヨコも執筆陣として名前があったので何の気なしにそれを読んだ時に、小野塚カホリという漫画家の存在を知った。
衝撃的だった。彼女の描く人間とは何故あんなに魅力的なのだろうか。細い、しかも全くといって無駄のない線が、空白とベタの使い方がとにかく素晴らしいのに驚愕した。口にする言葉達も本音の本音を言っているようで、とても胸がイタくなる。寺山修二や種田山頭火を愛する小野塚氏だが、それをよく作品中に用い、言葉をとても大切にしている事が容易に感じられる。この、「僕は天使ぢゃないよ。」の中に含まれる「セルロイドパラダイス」という作品でも、一番冒頭に寺山修二の俳句が見られる。
現在はJune物の方が圧倒的な人気を誇るが、私が最初に読んだのはキューティーコミック掲載中の「釦」という作品だった。言わゆる三角関係を描いたものであったが、その描き方は今まで読んできたマンガとは一線を画していた。それ以来、小野塚カホリを追いかけ続けている。
一読の価値はあり。

Report: Mari Okada (1999.12.09)


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