Cinema Review

39 刑法第三十九条

監督:森田芳光
出演:鈴木京香堤真一、杉浦直樹、岸辺一徳

猟奇的な殺人事件の容疑者として劇団員の青年が捕まったが、その男は殺意を否定、事件当時の記憶が無かったと主張した。そして、2人の精神鑑定人が呼ばれる。果たして彼に対して刑法第三十九条は適用されるのか?

実に抑制された雰囲気の有る映画で、心地良く、楽しかった。

ストーリー的には、サイコ・ホラーな雰囲気を漂わせながら、野村芳太郎な濃い人間ドラマが主軸というバランスが心地良い。(ラストは個人的には?だったが。)
映像に関しては、余りにも暗すぎると最初は思っていたが、途中からはなかなか的確な表現だと。
また、構図の歪みっぷりは、ここ最近観た映画では断トツ。うるさいのは、うるさいですけど、うるさすぎず。映像の暗さとあいまって、登場人物達の歪み、屈折した心情を良く表していたように思う。

音に関しては、おおよその場面ではバックグラウンドノイズのみで、たまに音楽が入るという形なのだが、個人的にはちょっと音楽は邪魔。映画全体に対して、叙情的すぎると感じたので。逆に言えば、バックグラウンドノイズのみの音の構成がピッタリとはまっていた為に、音楽の部分が浮いてしまったのだと思うが。

役者さんの演技に関しても、脇役も含めてマトモな役者さんばかりで良かった。中でも岸辺一徳がやはり凄い。強烈に不気味な刑事役をやっておられて楽しい。ちょっと大ゲサでは有るけれど、恐らく人物全てを特殊に描くと考えられている演出意図から考えれば、許容範囲だろう。

それにしても白眉なのが、冒頭附近の犯行現場に警察が来るシーン。あんな音の使い方するなんて…。このシーンで、ぐぐっと映画に引き込まれてしまった。すごくユニークで、力の有る表現。脱帽。

人によっては、内容が暗すぎる・説教じみていると感じたり、映像の歪みに閉口する向きもあるやもしれないが、少し距離をとってみれば、表現だけでも結構楽しい良い映画だと思う。

Report: Jun Mita (1999.06.22)


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