Cinema Review

Dark City

監督:アレックス・プロヤス
出演:ジェニファー・コネリー、ルーファス・シーウェル、ウィリアム・ハートキーファー・サザーランド、リチャード・オブライエン

突然時間を止めて町の住人たちの記憶を入れ換える異星人たち。レトロ・フューチャーな映像のSF的サスペンス。

題名通り暗い町の話だ。昼のシーンは全くない。暗い、しかし美しい映像だった。ビデオで見たのは失敗だったかも知れない。劇場で見るべき一つだったろうか。後悔しながら見とれていた。

この感覚はどこかで以前味わったことがあると思ったら、『ロスト・チルドレン』だった。これも僕はビデオで見たのだ。共に暗いが美しいセットの映画だった。この作品も予算の大半をそのセットに注ぎ込んだのではないかと思えるほど美しかった。CGも良く使っているが、セットの付加価値として使っている。この点でも『ロスト・チルドレン』と同じだ。
似た暗さと言えば『バットマン』などがあるが、あれには暗さと共にティム・バートン特有とも言える生ザカナ的な冷たさがあった。この作品には何故か暗い中にも暖かみがある。劇中の季節は一応寒めで設定されいてるようだが、そこにあるのは不思議な暖かさだ。

白状するとジェニファー・コネリーを久しぶりに見ようと思ったのも動機の一つだ。彼女はやはり『フェノミナ』が一番だと思うのだが、『ロケッティア』でなかなかいい雰囲気だったのが気に入っていた。しかし彼女は今作ではほとんど出番がない。そして僕はそんなことは最後まですっかり忘れていた。冒頭で引き込まれてしまったのだ。

オープニングにはまるで『STAR WARS』のような、異星人がどうしたこうしたという説明的前書きが流れる。これを見て入り込めなくなったと知人はこぼしていたが、僕はもともとストーリーを追わないためか、このくだりをほとんど滝のように読み流してしまった。なにも覚えていない。
それが幸いしたのか、記憶をなくした男がバスタブから立ち上がる冒頭あたりから、ぐぐっと謎解き的雰囲気に引き込まれてしまった。そしてこの冒頭からの流れが非常に良いのだ。この種の謎解きサスペンスものと言うのは、こうした冒頭部分の引力が全てを決めるんじゃないかと思う。僕が気に入っている作品はまず例外なくこの冒頭が良い。

(ちなみに大好きな『GATTACA』は余りにもオープニングタイトルがきれいなために引き込まれてしまった。それと音楽。タイトルでこんな事をするとは、ほとんど反則技だ。対して『らせん』は冒頭がすごく好きだが後半どうしようもなく詰まらないと感じる。難しい。)

ジェニファーはこの男の妻という役所なのだが、歳相応のシックさと生来の純真さにミステリアスな雰囲気も加わって悪くない。彼女が狂言回しになってストーリーを進めていくと言うのも悪くないなあと今更思う。
彼女はしばらくメジャーな映画に出ていないようだが、どんどんこうした作品に出て欲しいと思う。生活感のある姿を見た事がないので日常的な作品は想像できないが、こうした作品にはマッチしていると思う。

Report: Yutaka Yasuda (1999.06.20)


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