Cinema Review

フェノミナ

Also Known as:FENOMENA

監督:ダリオ・アルジェント
出演:ジェニファー・コネリー

小さな山村で、猟奇的な殺人事件が発生し、この事件の操作を昆虫学者が手伝うことになった。そこに失踪した少女の友人であり、昆虫と意志を通じることが出来る少女が現れる。

ずいぶん久しぶりに見た。やはり良い映画だと思う。

主演はまだ売れる前のジェニファー・コネリーで、これより前のメジャー作品というと『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』位か?しかしこの作品で一気に売れた。
彼女は確かに美人だが、愛嬌のある顔立ちをしている。それに真っ黒な髪を長くストレートに垂らして、神秘的な雰囲気がある。これが映画の雰囲気の基調になっている。彼女が画面に居ないときはどうも C 級(!)ホラーっぽいのだが、彼女が出てくるだけでグッと画面が落ち着いて良い感じになる。この雰囲気はその後の『ラビリンス』などでは見ることができないもので、僕はすごく好きだ。それが理由で、彼女の映画ではこの『フェノミナ』が最も気に入っている。
この作品の後、彼女の人気は爆発する。特に日本での人気は凄いものがあった。そのせいか、彼女はこれ以降、むしろもっと明るい雰囲気の役で出るようになった。彼女を久しぶりにスクリーンで見た『ロケッティア』などが典型だろうか。でも僕はむしろ、彼女にはミステリアスな役が似合うと思っている。最近の出演作ではこうした傾向の作品もあるようで、嬉しい限りだ。

最後の方で、ホラー映画的「グサッ」「ドサーッ」というシーンが飛び出してくるが、それまではむしろサスペンス仕立てで、その筋書きをジェニファーがジョルジオ・アルマーニの衣装を取っかえひっかえ着替えながら、スルスルと泳ぐという感じだ。白黒基調の、この衣装がなかなかシックな感じがして良い。そこから来る透明感が、ミステリアスな雰囲気に結び付いているからだ。

音楽にアイアン・メイデンなどのロック・アーティストの名前が見られる。この作品のように静かな恐怖を演出するホラー映画に、余り合わないと思えるような激しいナンバーが唐突に挿入されており、これがちょっと異様な違和感をかもし出す。監督の趣味なのだろうが、これは再編集した方が良いんじゃないだろうかとさえ思える。
このハードロック部分以外の音楽は「ドヨーン」とした音で、寒々しい舞台(スイスのチューリッヒ)に良くマッチしていると思うからなおさらだ。

Report: Yutaka Yasuda (1998.01.31)


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