Cinema Review

ニューヨーク1997

Also Known as:Escape from New York

監督:ジョン・カーペンター
出演:カート・ラッセル、リー・バン・クリーフ、アーネスト・ボーグナイン、ドナルド・プレザンス、アイザック・ヘイズ、ハリー・ディーン・スタントン、アドリエンヌ・バーボー
音楽:ジョン・カーペンター

犯罪の多発する世紀末、1997年のニューヨークでは、マンハッタン島それ自体が巨大な刑務所となっていた。そこに不時着した大統領を救出する為に犯罪者を送り込むが、それには24時間しか残されていない。B級アクション付き近未来SF。

1981年作の近未来SF作品であるが、設定が1997年つまり今年なのだ。原題は『ニューヨークからの脱出』と、年号が入っていないが、邦題は何故かこの通りとなっている。僕が初めてこの作品を最初に見たのはTV放映の時なのだが、結構気に入ったせいで年号付きで題名を良く憶えていた。そのせいで今年になったら「ああ、あの年になったのね」と思い出したりしていた。その辺りを狙ってか、先日サンテレビ(神戸のUHF局)で放映された。勿論僕は再チェックした。しかしハリウッドでも評判がよかったと見えて、今度リメイク作品が出るのだそうだ。
因みにテレビの番組中で作品紹介をしていた山城信吾が脇役俳優の顔ぶれが凄いと言っていた。僕には余り良く判らないけれど。

作品としてはなかなか良く出来たものだと思う。結構滅茶苦茶なところもあるのだが基本的な設定とその描写は斬新で、当時としては結構トンでいたのではないだろうか?
24時間と言う制約でのある種の極限状態を描いているが、同じような状況のジョン・カーペンターの作品に他に『遊星からの物体X』がある。しかも同じカート・ラッセルの主演で、僕はこちらの作品も大好きだ。彼はこの作品以降主役をやるようになったそうで、『不法侵入』ではマデリーン・ストウの横で珍しくキレイな役をやっている。どうも今一小汚い役が多いんだな。彼は。

僕が気に入っていた理由の一つにコンピュータグラフィクスがある。飛行機がビルに突っ込んで脱出カプセルが飛び出すシーンがあるのだが、これの描写が当時珍しかったと思えるコンピュータグラフィクスなのだ。と言っても黒背景にワイヤーフレーム(線画)なのだが、これが結構カッコ良かった。今の実写よりお金のかかるCGとは違い、多分相当に予算を削減したと思う。
この頃から簡単なCGが映画に散見されるようになるのだが、大抵は今ごろになって見ると実にチャチなものに見えてしまう。しかしこの作品の場合はそうでは無い。道具としてうまく使っていると言うことなんだと思う。僕はこのグラフィクスのシーンが余程気に入ったのか、他のシーンより何よりこのシーンを良く憶えていた。

ところでこの頃から暗い未来観に基づく作品が増えているように思う。僕とほぼ同世代で、この種の未来観をバックグラウンドとして共有していると思える士郎正宗の作品の中にワンカット、「プリス!」「スネイクと呼びな」というのがある。この映画の有名なセリフから取ったものだが、ああこの人も好きだったのねと思ったものだ。
結構僕の世代には良く憶えている人が多そうな気がする作品だ。

最後にこの作品で予言されたことの殆ど全て(社会的状況も技術も)は1997年現在で外れてしまっているが、唯一カセットテープ、つまり音楽用コンパクトカセットが生き残っていることだけは書いておきたい。MD(ミニディスク)などが普及しつつあり、もうすぐ消滅する可能性もあるので、滑り込みセーフなのかも知れないけど!

Report: Yutaka Yasuda (1997.05.03)


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