Comic Review

風の谷のナウシカ

作者:宮崎 駿

火の7日間と呼ばれる戦争によって壊滅的な打撃を受けた旧文明に代わって、そこでは腐海と呼ばれる猛毒のガスと胞子を撒き散らす植物群と巨大な蟲(むし)が世界を覆いはじめていた。

僕が最初にナウシカを見たのは『アニメージュ』と言うアニメーション関係の月刊誌に連載されて間もなくの頃で、多分高校生だったと思う。1982年から1994年の12年間にわたって断続的に連載されており、僕を含めて多くの読者が恐らく完結させることは不可能なのではないかと思いながら、何年かに一冊出る単行本を買い続けていたはずだ。僕同様に最終巻が出た時に有る種の感慨を、それら多くの読者が共有したと思える。そして最終巻に宮崎駿が出したナウシカ世界への解答は、それ以上のショックを多くの読者に与えたと思う。そう、彼は自らが創り出した世界への解答を、長い年月を費やし、苦しみながらも出したのだ。

残念ながらその内容は僕には説明できるものではない。宮崎駿の僕等へのメッセージがどのようなものなのかをここに書くことは僕には出来ない。
安部公房が『死に急ぐ鯨たち』と言う論集の中で、「批評家から何を書きたかったのか、どういうメッセージを込めたのかと言われても答えようがない、ただ判っている事は、作家もその作品の世界を生き抜いたという事だけだ」と語っている。正しくそう思う。つまり宮崎駿も12年を費やして自ら創り出した『風の谷のナウシカ』の世界を遂に生き抜いたのだ。
この作品はその記録ですらあると思う。宮崎駿の苦しみが、読んでいる僕にもひしひしと伝わってくるからだ。

Report: Yutaka Yasuda (1997.04.16)


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