Cinema Review

フェティッシュ

Also Known as:Fetish

監督:レブ・ブラドック
出演:アンジェラ・ジョーンズ、ウィリアム・ボールドウィン、バリー・コービン、メル・ゴーラム

銃声が鳴り、少女の前を突然死体が降って来た。家から出てはいけないと言われながら、少女はつい路上の死体の前に行ってしまう。年月が過ぎ少女は大人になるが、死体への興味はその時のまま続いている。

これはヨロシイ!Very Good である。早くも今年度一番の呼び声が(僕の中で)掛かっている。まあこの時点では当たり前か。でも本当に久し振りに僕の趣味な映画だ。何しろチラシの「首、切って、スカッ」というコピーで僕は見に行こうと決めたのだ。こりゃ良い響きじゃないの。

主役の奇妙な女は幼い頃の経験からか、死体と凶悪殺人事件にひたすら興味を感じている。そう、彼女は人が殺されたときの、その経過が知りたくて知りたくて仕方がないのだ。まずどこを刺され、どう回って、次にどこを押えつけられたのか、その時何を言ったのか、それが気になって気になって仕方がないのだ。
何が面白いと言って、この彼女の日常性からの逸脱具合が面白い。完全にトんでいるわけでもない、その微妙なズレが面白いのだ。彼女を食事に誘う人の好いニィちゃんもそのズレになんとなく気圧されているのがまた笑える。
何と言うのか、うまく言えないが執拗にディティールにこだわって描かれたそのズレがこの作品の骨格なのだと思う。

そして作品中最大の見せ場は、彼女が殺人現場で音楽に合わせて踊りながら殺人の過程を再構成するところだろう。これがまたよろしい。それまでどちらかと言うと屈折感覚に縛られてきた作品の空気が、そのダイナミックな動きで一気に晴れる。そのコントラストが良い。

プロデュースにクエンティン・タランティーノが噛んでいる。うんうん。全くそういう雰囲気がする。似た感触を『フォー・ルームス』のタランティーノ編で感じる。元々この作品はもっと短い短編だったそうで、それを見たタランティーノがせっついて主演、監督共に同じままで劇場用にリメイクしたのだそうだ。そのせいか僕はもっと切っても良かったように思った。

因みに主演の彼女はそれがきっかけで『パルプ・フィクション』にも出ているそうだ。ブルース・ウィリス演じるボクサーに「人を殺すのってどんな気分?」と、まるきりこの作品の主人公そのままに質問するタクシーの運転手役。ああそう言えば居たなあこんな人、という感じだ。もう一つタランティーノの事を言えば、『フォー・ルームス』などを含めてオープニングにすごく凝る傾向が有ると思う。この作品のオープニングも負けずにかっこいい。

そうそう、この作品はエンドロールまで席を立っちゃいけない。タランティーノの噛んだ映画なんだから。でもラストの面白さでは、その飛び方の強烈さで『プリシラ』に軍配が上がるけどね!

Report: Yutaka Yasuda (1997.04.07)


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