Cinema Review

ナインハーフ

監督:エイドリアン・ライン
出演:ミッキー・ローク、キム・ベイシンガー

男と女が出会ってから別れるまでの9週間半を描く。

祇園会館でアルバイトを始めたときに上映していたのが『ナインハーフ』だった。最後の二日ほどしか知らないが、若い女性で満員、初めから無かったのか、売り切れたのかパンフレットがなくて皆、残念そうに帰って行ったのを覚えている。

この映画を知ったのは深夜にあった予告ばかりの特集番組だった。暗い画面に浮かぶ光と映像、ビリーホリディの静かな歌声。何か心に残った予告だった。
その後女性雑誌などでアブナイ場面ばかり騒がれていてロードショーでは見に行く気にはならなかった。恋愛映画はイマイチ、と言うのもあったが、いつも映画を一人で見に行く私には痴漢が出そうだったのでやめた。(実際何度か痴漢に遭ったことが有る。)
でもずっと気になっていたので早速アルバイト先で見せて貰った。黒と白の中に時々はっと出てくる赤。闇の中に差し込む光。それはモダンな感じだったり、柔らかな光だったり。とてもかっこ良くて、すてきな色彩だった。

私が好きなシーンは音楽が流れる中、チェーンの掛かった部屋に入ろうとするミッキー・ロークと、中でドアを閉めようとして怒っているキム・ベイシンガー。最後にミッキー・ロークがドアの隙間からふっと微笑んで白い花を一輪差し出す。この映画の中で一番普通のカップルらしい場面だ。
あとキムが店でグレーのとても素敵なスーツを来て、後ろで見ているミッキーが店員にお金を払う。キムは「気に入ったか聞かないの?」と言うと、ミッキーは静かに微笑みながら首を横に振る。キムの髪をミッキーがとかしている場面なんかも結構ゾクゾクっとして好き。

この映画のミッキー・ロークはとにかくかっこいい。他の映画は太ってて、よれよれした感じが多いのに、ここでは黒と白のファッションでびしっとしていて静かに微笑んでいて、口数は少ない。映画のストーリーは余り好きではないけれど、ミッキー・ロークは最高の映画だった。キム・ベイシンガーも最近は綺麗だと思えるけど、このときは化粧がひどくて、パンダみたいな眼をしていて、手の筋が浮いてて大きらいだった。

そう言えばミッキーの相手役で素敵な人は居なかったなあ。今ではビデオを買ってミッキー・ロークをうっとりと見ている私ですが、アルバイト先では(上映以外のものでも)パンフレットを仕入れて売っていて、ナインハーフのパンフレットをそのリストで見つけた時、上映の時に無かったのを思い出し自分も欲しかったのと絶対に売れると確信して、良く売れるかなと言うもので20冊と言う所なのですが、その数で仕入れて貰いました。するとあっと言う間に売り切れ、その後50冊単位で何度も仕入れたものです。サントリーのCM効果もあって、あの時はミッキー・ロークのブームだったのです。

今はどうしているのでしょうね。でも太ったミッキーはもう見たくない。

Report: 元ミス祇園会館 (1995.07.01)


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