Cinema Review

ローマの休日

Also Known as:Roman Holiday

監督:ウィリアム・ワイラー
出演:オードリー・ヘップバーン、グレゴリー・ペック

ローマを親善旅行中の王女が公式スケジュールにうんざりして、夜中一人でこっそりとローマの街へ。そこで、新聞記者のジョーと会って楽しい時間を過ごすのだが・・・。(1954年アメリカ映画)

「映画が始まると同時にその映画の主人公になりきるタイプ」の私は、この映画を見ている時、なんとなく、自分が日本の天皇家の娘になってローマを親善旅行している気分になってしまった。そして、この映画が終った時には、ローマでの素敵な思い出が過去形として胸に刻まれていたのだった。

新聞記者のジョーは、スクープをものにしようという下心を持って、アン王女をローマの街を案内したのであるが、次第に彼女に恋してしまう。本当に、男と女の出会いというのは、不思議なものだと思う。もし、彼女が王女だということを知らなかったなら、彼は彼女にローマの街を案内しなかっただろうから、恋をすることもなかっただろう。もし、王女が夜中にこっそり抜け出してローマの街に出かけなかったら、彼に会うこともなかっただろうから、恋をすることもなかっただろう。しかし、そんな「もし・・・」など、男女の出会いにおいては、ほとんど意味がないように思う。唯一重要なのは、彼と彼女はとにかく出会い、そして素敵な恋をしたという事実なのだから。

この映画は、音声をオリジナルの英語にして楽しむべき作品である。彼女の王女らしい雰囲気は、表情からだけではなく声からも伝わってくるからである。彼女の有名なセリフである「It would be difficult to ... Rome ! By all means, Rome. I will cherish my visit here in memory, as long as I live.」を聞くためにも、音声は英語にしておかなければならない。

また、ちょうど映画の中間のあたりに、ジョーがカメラマンのアービングに「写真を現像してきたら?」と言う場面がある。その時、develop(ment) という単語が使われるのであるが、develop には「発達させる」という意味の他に、「フィルムを現像する」という意味もあり、彼女には「発達させる」の意味で使っているように思わせ、カメラマンには「現像してこい」という命令だと気づかせるために、ジョーが苦労している姿がとてもおもしろい。

この映画の舞台はローマだということで、タクシーの運転手と掃除の女性はイタリア語を話していた。しかし、それ以外の登場人物はみんな当然のように英語を話す。主人公がアメリカ人だったり、英語を話す人だったりするのだから別に不自然なわけではないが。アメリカ映画で、ヨーロッパやアフリカなどのアメリカ以外の国を舞台にした映画は、いつもこのパターンである。
別にそれを批判したいのではない。逆に、映画の中で旅ができるこの種のアメリカ映画を、私は高く評価している。それらの中でも、この映画は一番のお気に入りである。

Report: よしだともこ (1995.06.18)


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