Cinema Review

オネアミスの翼−王立宇宙軍−

監督:山賀博之
声:森本レオ、弥生みつき
音楽:坂本龍一


僕がいちばん好きな映画と言うのは、実は Animation だったりします。

この映画の公開は僕が中学生の頃、1987年3月14日です。8億円という巨大な制作費とアニメーション離れした絵のきれいさ。そして何より、坂本龍一の音楽に惹かれてついつい観に行ってしまいました.....

主人公のシロツグは、オネアミス王国という国の王立宇宙軍の軍人です。宇宙軍と言っても名ばかりで、まだロケット一つまともに飛ばしたこともなく、何等戦力のない軍なので国防省の中でも廃止が叫ばれているような、そんな軍でした。
シロツグは幼い頃は、水軍に入って飛行機乗りになるのが夢でした。
しかし、学力もなくて思い通りには行かず、仕方無しに宇宙軍に籍を置いていたのです。
そんなある日、彼はリイクニという若い女の子の宗教家と出会います。次の日何となくその娘のことが気になって、家まで会いに行きました。その時に彼女に「宇宙軍なんて。夢があってすばらしい仕事ですね」などと褒められ、すっかりその気になってしまいます。
そんなところへ、軍で人類初の有人宇宙飛行の計画が持ち上がり、その宇宙飛行士に志願してしまいます。
そうして、世の中の隅っこにいたような一人の若者が、人類史上の英雄となってゆくまでの物語です。

内容の雰囲気的には『未来世紀ブラジル』と『ライトスタッフ』のあいのこと言うところでしょうか。

見所は、やっぱりラストのロケット打ち上げのシーンかなぁ。何でも、わざわざそのシーンのために、NASAまでシャトルの打ち上げをロケに行ったそうで、それだけの迫力は出ているんじゃないかなと思います。でも、打ち上がるロケットは、実はソ連型のロケットがモデルになってるんですよね。

あとやっぱり、見逃せないのは音楽でしょう。
坂本龍一がアニメーションの音楽をやった(彼が『ラストエンペラー』で世界のサカモトとなる直前の仕事だ)のは恐らくこの作品だけだと思いますが、決してアニメだからと言って手抜きになるのではなく、しっかりとこの作品の世界を支える重要な柱の一つになっています。
他にも音楽として、上野耕路、野見祐二、元パール兄弟の窪田晴男がそれぞれいい味を出しています。

この映画は、その世界観の構築から、お話作り、演出まで、かなり本物っぽく作られています。それだけに、この映画には「なぜあえてアニメーションなのか」という声が聞かれたようです。
しかし、アニメだからこそこれだけの異世界が、たったの(^^;)8億円で作れたし、またそれが、スタッフの、アニメーションという物の可能性に対する挑戦でもあったのだと思います。

アニメはちょっと、、、という人も多いでしょうが、この映画はなかなかいいと思いますよ。
噛めば噛むほど味が出る。そんな映画です。

Report: 中内 博一 (1995.06.06)


[ Search ]