Cinema Review

美女と野獣

Also Known as:Beauty and the Beast

監督:ギャリー・トロスデイルキーク・ワイズ

冷血な王子が魔法使いに魔法を掛けられて野獣にされてしまう。薔薇の花が枯れるまでに誰かに愛して貰えれば魔法は解けると言う。野獣となった王子は転がり込んできた娘を虜にしてしまう。

おとぎ話の『美女と野獣』をベースにしたディズニーの古典的な作りのアニメーション映画だ。この前の『リトル・マーメイド』やこの後の『アラジン』などが比較的現代的な、明るいお話だったのに対してこの作品は中世のフランスを舞台(でも英語)にした古典的で切ないストーリーとなっている。僕の最も好きなディズニー映画の一つだ。映画の原題は『Beauty and the Beast』で、これまた原作と同じ。

素晴らしい!本当に素晴らしい。ストーリーは見ていただくとして、ラストが何と言っても良い。野獣が矢に倒れ、娘の愛を受けて魔法が解けると共に王子となって生き返るのだが、そこで光輝く雨が降る。余りにもお約束と言えばお約束過ぎるが、まあ派手に降る。見る方もそれに付き合って、なりきって見るべし。ここで「をいをいそりゃないやろ」などと醒めてしまう人はこの映画を見ちゃいけない。
勿論ロードショーで見たのだが、何と二番館でもう一度見てしまった。それほど気に入ってしまった。

僕はアニメーションが好きで、高校生の頃は自分で作ろうかと思って実際実験的なカットをいくらか友達と描いたりしていた。結局自分には無理だと判って止めてしまったが、そう言う訳で作る側の眼でアニメーションを見てしまう癖が付いてしまった。
この作品は内容的にも好きなのだけれど、アニメーションの手法としても良い所が随所にある。
先にラストの話をしたけれど、オープニングも良い。娘が歌いながら村外れの家を出てゆっくり歩いて村を抜けて行くところをずーーーーーーーっとフォローしながら様々なカメラ位置から見せてくれる。しかも一度もカットを入れることなしに!これはアニメーションでしか出来ない表現だ。しかも非常に美しい。『バンビ』のオープニングと同じくらい好きなシーンだ。

アニメーションにしか出来ない表現を追及すると言うのはアニメーションの存在価値として重要だ。現在はコンピュータによる映像加工などで、ますます作成不可能な映像が少なくなってきているようだ。しかしアニメーションは初めから全てを手で描いているので、作成不可能な絵など元々存在しない。想像できればそれは実現できる世界なのだ。現実的なアニメーションなどもったいないではないか。実現不可能な世界、表現こそアニメーションにはふさわしい。アニメーションを見ない映画好きな人には是非この作品のオープニングを見て欲しい。アニメーションの世界とその可能性を知ることが出来るだろう。

僕がディズニーのアニメーションを好きな理由の一つに(ほぼ)完全な手描きのフルアニメーションだからと言うのがある。これを良く活かしているのが『白雪姫』の小人達の動きなどである。滑らかで美しい。この『美女と野獣』でもディズニーは伝統的な製作手法を用いている。即ちキャラクター毎に専門に描く人(アニメータと呼ぶ)を用意しているのだ。娘は誰、野獣は誰、ちょい役のオオカミだって専門の人が居る。こうして各キャラクターはそれぞれ独立の個性と「いのち」を吹き込まれるというわけだ。実際劇場で初めて見たときなんと見事にオオカミが動くなあと感心したが、エンディングのスタッフロールでオオカミにも専門のアニメータが付いているのを見てまた感心したというわけだ。

Report: Yutaka Yasuda (1995.05.28)


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