Cinema Review

天国と地獄

監督:黒澤 明
出演:三船 敏郎三橋 達也中代 達矢山崎 努志村 喬
音楽:佐藤 勝

誘拐犯が金持ちの宅の子供と間違えて別の子供をさらってしまった。しかし金持ちはその身の代金を払うという。愉快犯的な犯人を警察が追う。

サスペンスである。僕は黒澤映画はアクションに尽きると思っているのだけれど、これは珍しくアクションではない作品で好きなものだ。素晴らしい。犯人役の山崎努(推理劇ではないからここで書いても問題ない!)が若い。彼がギラギラした男を演じ、これを不気味な雰囲気の中代達矢がひたすら動いて追う。ストーリーはニ転、三転し、ある意味では活劇に近い部分もある。要するに僕は急転直下の展開が好きなのだろう。
こういう急転直下の展開をしてくれる監督というのは余り見当たらない。ルーカスと宮崎駿くらいか。そう言えばルーカスはクロサワが好きだったっけ?

この作品は劇場で見た。モノクローム作品なのだが一部色が付く場面がある。ネタばらしになるので書かないが、その部分はどうやらモノクロームのフィルムにてで色を塗っていったと思われる。だって当時はカラー現像、カラーフィルムがなかったはずなのだ。配給の本数分だけ塗ったとなればこれは大変だ。一体何本プリントして配給するのか知らないが、しかし考えようによっては世にも珍しい一本一本違う映画となったわけだ。僕が見たあのフィルムを、別の劇場で別の人が見ているかもしれないが、ある人は同じ映画を見たと言っても、僕とは違う映像を見ていることになるわけだ。何となく面白い。

そう言えばこの作品の犯人のイメージ、行動パターンをアニメーション映画『パトレイバー』の二作目だったかな?がパクっているような気がするのは僕だけかな。

音楽は佐藤勝。やはりこの人の音楽は良い。

文句無く人に薦められる黒澤映画だと思う。

Report: Yutaka Yasuda (1995.05.26)


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