Cinema Review システムへの動機
Cinema Reviewシステムは、当時流行しはじめた Web に対して、安田が感じていた
問題を解決する一つの実験として実装されました。
その問題とは以下のようなものです。
- どうして自分の記事を表現するために、HTMLなんかを覚えなければならないの?
これはどう見てもプログラミングに近いではないか。
もっと簡単に Web ページを作れる仕掛けが必要だ。
Webは出版の制約を引き下げ、多くの作家を生み出せる可能性を持ちながら、
それを今度は記述言語による障害によって阻んでしまっている。
- どうして言語でページを記述しているのに、そこには断片的なページを運営する
為の仕掛けが一つも用意されていないの?
100ページ作って、ボタンを各ページに追加するために、どうして100ページ全部を
片っ端から手作業で修正しなくてはいけないのか。
同様の記述言語である TeX などにはマクロや include 的な機能が備わっているのに。
記述言語を必須としている癖に、余りにもその記述能力が低い。
更に断片的なページ構成を前提としている癖に、大量ページ管理の為の機構が
欠如している。
- リンクを手作業で付けている為に、余りにも混沌としたリンクを付けることが
メンテナンスの都合上ためらわれてしまうのは解決できないのか?
継続的な増加と多人数によるメンテナンスを要する Web ページ群は、
それ故整理された構造、例えば安直にはツリー状にならざるを得ない。
しかしもともと Web はハイパーテキスト的なものではなかったか?
構造無きハイパーテキストを指向していながら、単純すぎるリンク機構と
管理機能の欠落の為、結果的にツリーなどの構造に収めざるを得ないと言う矛盾。
これらを解決するために安田が採った方法は以下のようなものです。
- 簡単なテキスト(せいぜいタグが付く程度)から HTML にコンパイルする
ように変換する。
- 原稿は純粋に内容のみで構成し、それ以外の要素(ヘッダやボタンなどの
飾り)はコンパイル時に付加する。
- リンクは自動合成、もしくは半自動合成にする。
そうして Cinema Review システムは開発され、最終的に 140 編を越える原稿を
様々な人から寄稿して頂きながらメンテナンスの手間を増やす事なく、矛盾なく
運営し続けてきました。
普通に手作業で HTML を書いていたらとてもではありませんが、この半分も行かない
うちに編集作業にネをあげていたでしょう。
外部公開
1995.5 には稼働し、安田の個人ページとして運用されていた Cinema Review
ページは、しかし余り広報せず、個人的な口コミ程度で公開、原稿募集をし
続けていました。
それを、味田君が当時在学していた京都産業大学の目立つ所に置き直して広報し、
サーチエンジンに登録するなどして広く公開しようと提案してくれました。
安田は実験的な色合いを重視しており、実利用するつもりが無かった為にしばらく
渋っていましたが、Web の世界に学生を参加させるのに映画という切り口は
結構効果的だと言う味田君の言い分と熱意(執拗さ?)に負けて、広く公開する
ことに思い切りました。
そうして公開してから投稿者も現れ、雑誌などにも何度か紹介されたりしました。
誹謗中傷に満ちた愚かな記事の投稿もなく、結果的には公開して良かったと
思います。味田君に感謝!
Media Mix Review への動機
奇しくも味田君が指摘した様に、映画には多くの人を様々な切り口から惹き付ける
性質があります。それは恐らく映画が「総合芸術」などと呼ばれる、つまり
メディアミックスなものだからだと思えるのです。
映画には音楽、映像、芝居、ストーリー、原作としての文学、衣装、歴史的な側面など、
ありとあらゆる見方があり、多くの人はそれぞれ独自のバランスでそれらに
接しています。
そして安田は、今の大学生や、多分味田君よりもまだ若い人たちが暮らしている
世界の事を考えざるを得ません。
そう、ファミコンと共に子ども時代を過ごした世代です。
そこではマンガ、アニメ、ゲーム、音楽、小説、そして声優や俳優(アイドル?)や
ゲームのデザイナー、果てはゲームの名人(?)までもが混然一体となった
メディアミックスな世界が日常なのです。
彼らはまさにメディアミックスな世代なのだと思えるのです。
彼らの思考(及び指向、嗜好)を受け入れるシステムとしては、Cinema Review では
受け皿として小さ過ぎます。
つまり単一のジャンルしか相手にしないものは時代に合わなくなっているのです。
これらすべてをミックスしたレビューを受け入れる場が必要です。
そう、Media Mix Review システムを設計しなければいけないと考えたのです。
そして Media Mix Review では以下のように多くの機能を追加しました。
- 記事数が数千になっても破綻しない検索システムを持つこと。
- 過去の記事からも、後から追加された記事に対してリンクが張り直されること。
- 多くの記事タイプと、それに合う多くのタグを簡単に用意できること。
これらの事が最初に挙げた Web が抱えるシステム的な問題の解決方法にもなっている事が重要なのですが、今のところは正しく機能しているように思えます。
楽しんで頂ければ幸いです。